レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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13章:香織と少年の交換日記

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 それから、15分もせず、寧々が来店した。
 「寧々様、無理を言って申し訳ございません。一つだけ、お願いしたい事が、ありまして…。」
 「良いって、古川さん。それより、お願いって?」
 今井さんの隣に腰を下ろした、寧々が、そう訊ね返した。
 「賢太様の御母様と、込み入ったお話が、したいので、一時間ほど、彼の事、お願いできますか?」
 私は、アイスコーヒーを、寧々に差し出した。寧々はそれを、一杯飲むと、私と、その場に居る、人物の顔を、見回した。
 「なるほどね…。」
 何かを察した様に、呟くと、グラスに残っていた、コーヒーを一気に飲み干し、最後に、氷を、一粒、咥えた。
 「香織経由で、連絡してきたのは、流石に卑怯だね…。こうなれば、私も断れないから、そのお願いに、応えます。
 その代わり、夏休み終わるまで、コーヒー、飲み放題にして。」
 「それくらいなら、文字通り、お安い御用です。」
 それを聞いて、杏沙さんが、狼狽えた。
 「え…。でも…。」
 「大丈夫ですよ。弟居るんで、これくらいの子、慣れていますから。」
 そう言うと、寧々は、賢太君の前に、行き、「よし、今日も、この間みたいに、お姉ちゃんと、デート行くよ。」と手を引き、店を出て行った。
 流石、小学生の男の子。女性からの、『デート』という言葉には、弱いらしく、二つ返事で、了承していた。

 「さて、賢太様は、寧々様に任せて、大人の話…。いや、貴女の、本音を利かせて下さい。」
 「と、仰いますと?」
 杏沙さんは、困った様に、そう言った。
 「今の貴女は、賢太様の為に、無理に虚勢を張り、本当の自分すら、その虚勢に、否定させている様な、気がしましてね…。」
 そう言うと、古川マスターが、視線だけを、私の方に向けた…。
 「彼女は、そう言う人の感性や、感情に、敏感な所がありましてね…。そんな彼女が、先ほど貴女の、言葉を聞いたときに、少しだけ、嫌な顔をしていましたので、もしかしたら、何か、隠しているのかと思いまして…。」
 古川マスターの視線に、釣られる様に、杏沙さんも、こちらを見詰めていた…。
 「えっと…。その…。」
 私も、余り人に見詰められるのが、慣れて居ない…。だから、その、視線が、痛かった…。
 それに、私は、人の言葉や、仕草から、人の感情が、何となくわかる…。それは、間違いないのだが、そこまで、露骨に、嫌な表情を、していただろうか…。
 それとも、古川マスターが、ただ、敏感なだけだろうか…。
 少しの間が開いた後、杏沙さんが、ぽつりぽつりと話し始めた。
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