レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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13章:香織と少年の交換日記

7-4 抹茶の香り

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 「う~ん…。470円なんてどうでしょう…。一般的なチェーン店と比べれば、多少値段が張るかもしれませんが…。」
 母親が、もう一口、頬張った後、そう述べた。そう言えば、九条さんが、値段を決めてくれと、彼女に言っていた…。
 「抹茶の単価的に見ても、妥当ですね…。ワンコインというのも、喫茶店のメニューでは、十分魅力的です。それに、飲み物として、提供できる、スイーツ系は、かなりの即戦力になります。」
 喫茶店に限った話ではないが、メニューに置いて、500円もしくは、1000円を超えるかどうかが、カギになって来る。
 れとろでは、ブルーマウンテンなど、元々単価が高い、銘柄以外は、基本的に、500円あれば、一杯頂ける。トーストや、コーヒーゼリー、パンケーキと言った、軽食・菓子系(ドリンク付き)が、650~899円の間。パスタやオムライスと言った、ガッツリとした、食事メニュー(ドリンク付き)は、どうしても1000円を超えてしまう。
 その中で、500円を切る、菓子系のドリンクが、出てしまえば、かなりの注文数が、出てしまいそうだ…。それは、“珈琲喫茶”としては、なるべく避けたい…。
 「数量限定にしてみたら、いかがでしょう?そうすれば、注文の偏りも、防げますし。」
 「なるほど、“限定”という言葉に、弱い所を着く作戦ですね?」
 「あ、いや、そうでは無くて…。」
 「解っていますよ。ちょっとした、ジョークです。」
 最近からだが、古川マスターにも、からかわれることが、増えた気がする…。
 「どちらにせよ、数量限定というのは、アリですね…。」
 「それは、良いとして、材料の仕入れは、どうするんですか?毎回、今回の様に、京都の清水の姉さんのところ経由で、仕入れる訳にもいかないでしょ。」
 それも、問題だ。ウチは、コーヒー豆とアルコールの仕入れ先は、何十件も知っているが、抹茶の問屋など、ツテが無い。そのため、もし、このダルゴナ抹茶を、レギュラーメニューにするのなら、それも、一から、探さなければならない…。
 「それは、既に、手は打ってあります。
先ほど、新庄様に、追加発注の連絡を入れていた時に、仕入れ先の確保を、依頼しています。
 早ければ、明日にでも、いくつか候補を上げて下さるでしょう。」
 流石、仕事が速い…。いや、こうなることを、想定していたのも、流石だ…。
 すると、森永母が、クスクスと笑いだした。
 「いかがなさいました?」
 古川マスターが、訊ねた。
 「あ、すみません…。ただ、凄いなぁと、感心してしまいまして…。」
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