171 / 309
13章:香織と少年の交換日記
6-7 母子
しおりを挟む
「九条様、フルシティローストを、お使いになられましたね。」
フルシティロースト。コーヒー豆の焙煎度合いを表す言葉である。本来、焙煎度合いは、『浅煎り』『中煎り』『深煎り』の三段階で、示されるのが、一般的だ。だが、それを、8段階に、細分化することが、可能だ。フルシティローストは、その内の一つで、『深煎り』に、分類される。
位置づけ的には、浅煎りから数えて、6段階目。私たちが普段、コンビニや、缶コーヒーなどで、目にする、レギュラーコーヒーの、1、2段階、上の深さだ。
味としては、ほんの少しの酸味が残り、後は、苦味とコクが強く出てしまう。完全に酸味が無くなってしまえば、エスプレッソやカプチーノなどの、イタリアンコーヒーとして、使えるので、扱いやすい…。
だが、フルシティローストの場合、酸味が少し残ってしまっており、それを誤魔化すために、生クリームを入れた、ウィンナーコーヒーやミルクなどを入れる事が、多い。
そのため、ストレートで、フルシティローストを、お客様に出すことは、まずない。
あるとすれば、“通”な常連客程度だ…。
「流石古川さん。見て分かったんですか?」
九条さんが、観念した様に、述べた。
「いえ、私が、覗いたときには、既に、お湯が注がれた後でしたので…。」
そう言うと、古川マスターは、自分の鼻を、右手の人差し指で、軽く撫でた。
「匂いで、分かりました。」
焙煎度合いを、匂いで確認できる人物など、そうそういない…。ましてや、横で私が同じ銘柄で、コーヒーを入れていたにも、拘らず…。
「相変わらず、凄い嗅覚ですね…。」
「フルシティローストの匂いは、意外と、独特ですので…。」
だけど、一つだけ、まだ納得できない点がある…。
「その、フルシティロースト?と、粗挽き、何の繋がりがあるんですか?」
私の疑問を、代弁してくれたのは、賢太君のお母さんだった。
それに、答えたのは、九条さんだった。
「味は、多い方に全体が傾きます。ですが、少数派が、ゼロになることは、ありません。」
カウンター越しに、不思議そうな顔で、先ほどから、私たちの会話を聞いていた、賢太君に、視線を移し、彼は、話を振った。
「賢太君。ピーマン食べられますか?」
すると、賢太君は、首を横に振った。
「ピーマン、苦手…。」
そして、今度は、母親の方に、話を振った。
「でも、細かく刻んで、炒飯とか、卵料理とかに、混ぜれば、食べてくれるでしょ?」
そして、母親は、首を大きく縦に振った。
フルシティロースト。コーヒー豆の焙煎度合いを表す言葉である。本来、焙煎度合いは、『浅煎り』『中煎り』『深煎り』の三段階で、示されるのが、一般的だ。だが、それを、8段階に、細分化することが、可能だ。フルシティローストは、その内の一つで、『深煎り』に、分類される。
位置づけ的には、浅煎りから数えて、6段階目。私たちが普段、コンビニや、缶コーヒーなどで、目にする、レギュラーコーヒーの、1、2段階、上の深さだ。
味としては、ほんの少しの酸味が残り、後は、苦味とコクが強く出てしまう。完全に酸味が無くなってしまえば、エスプレッソやカプチーノなどの、イタリアンコーヒーとして、使えるので、扱いやすい…。
だが、フルシティローストの場合、酸味が少し残ってしまっており、それを誤魔化すために、生クリームを入れた、ウィンナーコーヒーやミルクなどを入れる事が、多い。
そのため、ストレートで、フルシティローストを、お客様に出すことは、まずない。
あるとすれば、“通”な常連客程度だ…。
「流石古川さん。見て分かったんですか?」
九条さんが、観念した様に、述べた。
「いえ、私が、覗いたときには、既に、お湯が注がれた後でしたので…。」
そう言うと、古川マスターは、自分の鼻を、右手の人差し指で、軽く撫でた。
「匂いで、分かりました。」
焙煎度合いを、匂いで確認できる人物など、そうそういない…。ましてや、横で私が同じ銘柄で、コーヒーを入れていたにも、拘らず…。
「相変わらず、凄い嗅覚ですね…。」
「フルシティローストの匂いは、意外と、独特ですので…。」
だけど、一つだけ、まだ納得できない点がある…。
「その、フルシティロースト?と、粗挽き、何の繋がりがあるんですか?」
私の疑問を、代弁してくれたのは、賢太君のお母さんだった。
それに、答えたのは、九条さんだった。
「味は、多い方に全体が傾きます。ですが、少数派が、ゼロになることは、ありません。」
カウンター越しに、不思議そうな顔で、先ほどから、私たちの会話を聞いていた、賢太君に、視線を移し、彼は、話を振った。
「賢太君。ピーマン食べられますか?」
すると、賢太君は、首を横に振った。
「ピーマン、苦手…。」
そして、今度は、母親の方に、話を振った。
「でも、細かく刻んで、炒飯とか、卵料理とかに、混ぜれば、食べてくれるでしょ?」
そして、母親は、首を大きく縦に振った。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
素敵なおじさんと僕
紅夜チャンプル
BL
少年とバーテンダーの出逢いから始まる優しい物語(BL)
(1章)
雨に濡れる僕を見つけてくれたのは、一見怖そうに見える男の人だった。僕はその人のことが気になっていく。
6年後、20歳となった僕はバーに行く。あの人に会いたくて。
(2章)
僕の恋人は怜さん。結構年上だけど一緒にいると安心する。ある日突然、怜さんのことを「父さん」と呼ぶ人が現れた。
(3章)
昔から女性が苦手だった僕はあの日、貴方に恋をした。
ずっと親友だと思っていたお前のことを意識するようになった。
バーの常連客で大学生の翔(しょう)と拓海(たくみ)、そして凪(なぎ)のBLのお話。
そして既に恋人同士であるバーテンダーの怜(れい)と大学生の日向(ひなた)も仲良しさんです。
(4章)
社会人3年目となった僕には年の離れた恋人、怜さんがいる。ある日、怜さんの職場にシングルマザーがアルバイトで入って来た。その人の子どもを可愛いがる怜さんを見て僕は‥‥
鬼と私の約束~あやかしバーでバーメイド、はじめました~
さっぱろこ
キャラ文芸
本文の修正が終わりましたので、執筆を再開します。
第6回キャラ文芸大賞 奨励賞頂きました。
* * *
家族に疎まれ、友達もいない甘祢(あまね)は、明日から無職になる。
そんな夜に足を踏み入れた京都の路地で謎の男に襲われかけたところを不思議な少年、伊吹(いぶき)に助けられた。
人間とは少し違う不思議な匂いがすると言われ連れて行かれた先は、あやかしなどが住まう時空の京都租界を統べるアジトとなるバー「OROCHI」。伊吹は京都租界のボスだった。
OROCHIで女性バーテン、つまりバーメイドとして働くことになった甘祢は、人間界でモデルとしても働くバーテンの夜都賀(やつが)に仕事を教わることになる。
そうするうちになぜか徐々に敵対勢力との抗争に巻き込まれていき――
初めての投稿です。色々と手探りですが楽しく書いていこうと思います。
籠の鳥はそれでも鳴き続ける
崎田毅駿
ミステリー
あまり流行っているとは言えない、熱心でもない探偵・相原克のもとを、珍しく依頼人が訪れた。きっちりした身なりのその男は長辺と名乗り、芸能事務所でタレントのマネージャーをやっているという。依頼内容は、お抱えタレントの一人でアイドル・杠葉達也の警護。「芸能の仕事から身を退かねば命の保証はしない」との脅迫文が繰り返し送り付けられ、念のための措置らしい。引き受けた相原は比較的楽な仕事だと思っていたが、そんな彼を嘲笑うかのように杠葉の身辺に危機が迫る。
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる