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12章:眩しさ
4 味方
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私は、恐る恐る瞼を上げた。清水さんは、私と浅沼との間に、遮る様に立っていた。
寧々たちは、少々不服そうな顔をしていたが、黙りこくっていた。
清水さんの表情は分からなかったが、手が震えているのが、見て取れた。
「あの子も聞こえてるんや。ここで、そないな話は、辞めて頂きたい。」
「お姉さん、話が速くて助かりますわ~。」
浅沼の無神経な声が、聞こえてきた。
だが、その声も、次の彼女の一言で、かき消される…。
「お前さんは、ちぃとお黙まんなさい。」
ドスの聞いた様な、清水さんの言葉は、浅沼を震え上がらせた。
そして、何も言えなくなったのか、彼は踵を返し、足早に立ち去ろうとしたが、そうはいかなかった。
「金宮のじじぃが急に居なくなったと思ったら、こんな参事になっていたとはな…。」
「全くじゃ。お陰で勝負はお預けじゃけぇ…。」
月島さんと山本さんが、彼の行く手を阻んだのだ。
浅沼も、それなりにしっかりとした体付きだが、彼等には敵わない…。
簡単に腕を締め上げられ、地面に取り押さえられた。
浅沼は、何か呻きながら私を睨んでいた。
少し前の私なら、臆していたところだが、今は違う。私の為に怒ってくれる人もいるし、助けてくれる人もいる。
これだけ、心強い事は無かった。
そのあと、浅沼は、九条さんと共に駆け付けた、菊池刑事に拘束され、傷害の疑いで事情聴取のため、連れて行かれた。
私はというと、意識ははっきりとし、体温も落ち着いてきたのだが、足が竦んで、立てなかった。
緊張もほぐれたこともあり、足以外も、身体中の所々が、筋肉痛の様に、痛んでいた。
「なら、私が負ぶったる。」
そう名乗り出てくれたのは、清水さんだった。
最初は断ったのだが、彼女の強い押しにより、その言葉に甘えさせてもらった。
彼女の背中に乗っていると、何故か、懐かしい感じがして、ならなかった。
歩くリズムやスピード。髪の匂い。体温…。
何もかも、懐かしかった。
ただ、何故懐かしいのかは、分からなかった。
私は、次第に眠くなり、瞼を閉じた。
“重くなったなぁ”
そう聞こえた気がしたが、夢現の状態では、真偽は、分からなかった。
寧々たちは、少々不服そうな顔をしていたが、黙りこくっていた。
清水さんの表情は分からなかったが、手が震えているのが、見て取れた。
「あの子も聞こえてるんや。ここで、そないな話は、辞めて頂きたい。」
「お姉さん、話が速くて助かりますわ~。」
浅沼の無神経な声が、聞こえてきた。
だが、その声も、次の彼女の一言で、かき消される…。
「お前さんは、ちぃとお黙まんなさい。」
ドスの聞いた様な、清水さんの言葉は、浅沼を震え上がらせた。
そして、何も言えなくなったのか、彼は踵を返し、足早に立ち去ろうとしたが、そうはいかなかった。
「金宮のじじぃが急に居なくなったと思ったら、こんな参事になっていたとはな…。」
「全くじゃ。お陰で勝負はお預けじゃけぇ…。」
月島さんと山本さんが、彼の行く手を阻んだのだ。
浅沼も、それなりにしっかりとした体付きだが、彼等には敵わない…。
簡単に腕を締め上げられ、地面に取り押さえられた。
浅沼は、何か呻きながら私を睨んでいた。
少し前の私なら、臆していたところだが、今は違う。私の為に怒ってくれる人もいるし、助けてくれる人もいる。
これだけ、心強い事は無かった。
そのあと、浅沼は、九条さんと共に駆け付けた、菊池刑事に拘束され、傷害の疑いで事情聴取のため、連れて行かれた。
私はというと、意識ははっきりとし、体温も落ち着いてきたのだが、足が竦んで、立てなかった。
緊張もほぐれたこともあり、足以外も、身体中の所々が、筋肉痛の様に、痛んでいた。
「なら、私が負ぶったる。」
そう名乗り出てくれたのは、清水さんだった。
最初は断ったのだが、彼女の強い押しにより、その言葉に甘えさせてもらった。
彼女の背中に乗っていると、何故か、懐かしい感じがして、ならなかった。
歩くリズムやスピード。髪の匂い。体温…。
何もかも、懐かしかった。
ただ、何故懐かしいのかは、分からなかった。
私は、次第に眠くなり、瞼を閉じた。
“重くなったなぁ”
そう聞こえた気がしたが、夢現の状態では、真偽は、分からなかった。
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