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10章 争い
5 動揺
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補欠として、公清堂のスタッフ数名を入れることにより、頭数は何とか揃った。出場する競技もそれぞれ、決まり、後は開始を待つだけとなった。
体力を必要とする種目に出場する人たちは、各々ウォーミングアップを始めていた。そのため、テント内はかなり手薄になり、藤吉先生まで給仕に参加せざるを得なくなっていた。
ちなみに、それぞれの参加競技はこんな感じ…。
・腕相撲 古川、二代目
・ビーチバレー 新庄、彰、麻由美
・ビーチフラッグ 今井、九条
・大きいオセロ 遠野
・大きい神経衰弱 彩、清水
・料理対決 伊藤、寧々
・謎解き 藤吉、香織
・トライアスロン 月島、山本
若干不安な人が数名居るが、取り敢えず割り振りはこうなった。
私は特にやりたい競技がなかった為、売れ残った、謎解きになってしまった。
それ程、難しい問題等出ない様に願いたい…。
「宮本?」
その声で、心臓が跳ね上がるのを感じた。
時に生物は、嫌な経験や体験をすることで、それに纏わる事が、嫌い、苦手になる事がある。
例えば、一度溺れた経験のある人は、水に潜るのを嫌う。高い所から、落ちる。もしくはそれに類似した体験をすると、高所恐怖症になる。
こういった現象を世間一般的にはトラウマという事も、屡々…。
私の場合、数えきれない程の、トラウマを抱えている。
その一つに、彼の声があった。
声の方に向きを正すと、間違いなかった…。
「お、やっぱりそうだ!中学以来か?」
「な、何で…どうして…。」
その言葉を絞り出すので、精一杯だった。彼は、浅沼颯。小中と同じ学校同じ学年で過ごした、同級生だ…。
彼との思い出はとても良いものではない…。
私は、当時、妹とそれを取り巻く数名の男女に虐げられて来た。彼はその内の一人だった。学年は違ったが、妹の方が好みだからと、色々された…。
心拍数が上がり、呼吸がもどかしくなる程、私は心身共に動揺していた…。手の平は尋常じゃない程の汗が溜まり、持っているトレイが今にも落ちそうだった。
「何でって、大学休みだから来たんだけど。」
声を発するたびに、私の肩が小さく揺れる…。それに気が付いたのか、急にニヤついた顔になり、口を開いた…。
刹那、今となっては、聞きなれた京都弁が、緊張しまくっていた私の耳に飛び込んで来た。
「どないしたん?香織はん?」
清水さんが上品な笑顔を向け、私と彼の間に割る様に入ってきた。
「顔色悪いなぁ…。熱中症かいな?」
続け様にそう言うと、私の額に手を当てて来た。それなりに冷たくて、気持ちがよかった…。
「だ、大丈夫です…。」
「無理したら、あかんで?」
清水さんはそう言うと、彼の方に向き直った。
「悪いなぁ。この娘具合悪いみたいねん。またの機会にな?」
そう言うと、清水さんは私を引っ張り、休憩室に押し込んだ。
体力を必要とする種目に出場する人たちは、各々ウォーミングアップを始めていた。そのため、テント内はかなり手薄になり、藤吉先生まで給仕に参加せざるを得なくなっていた。
ちなみに、それぞれの参加競技はこんな感じ…。
・腕相撲 古川、二代目
・ビーチバレー 新庄、彰、麻由美
・ビーチフラッグ 今井、九条
・大きいオセロ 遠野
・大きい神経衰弱 彩、清水
・料理対決 伊藤、寧々
・謎解き 藤吉、香織
・トライアスロン 月島、山本
若干不安な人が数名居るが、取り敢えず割り振りはこうなった。
私は特にやりたい競技がなかった為、売れ残った、謎解きになってしまった。
それ程、難しい問題等出ない様に願いたい…。
「宮本?」
その声で、心臓が跳ね上がるのを感じた。
時に生物は、嫌な経験や体験をすることで、それに纏わる事が、嫌い、苦手になる事がある。
例えば、一度溺れた経験のある人は、水に潜るのを嫌う。高い所から、落ちる。もしくはそれに類似した体験をすると、高所恐怖症になる。
こういった現象を世間一般的にはトラウマという事も、屡々…。
私の場合、数えきれない程の、トラウマを抱えている。
その一つに、彼の声があった。
声の方に向きを正すと、間違いなかった…。
「お、やっぱりそうだ!中学以来か?」
「な、何で…どうして…。」
その言葉を絞り出すので、精一杯だった。彼は、浅沼颯。小中と同じ学校同じ学年で過ごした、同級生だ…。
彼との思い出はとても良いものではない…。
私は、当時、妹とそれを取り巻く数名の男女に虐げられて来た。彼はその内の一人だった。学年は違ったが、妹の方が好みだからと、色々された…。
心拍数が上がり、呼吸がもどかしくなる程、私は心身共に動揺していた…。手の平は尋常じゃない程の汗が溜まり、持っているトレイが今にも落ちそうだった。
「何でって、大学休みだから来たんだけど。」
声を発するたびに、私の肩が小さく揺れる…。それに気が付いたのか、急にニヤついた顔になり、口を開いた…。
刹那、今となっては、聞きなれた京都弁が、緊張しまくっていた私の耳に飛び込んで来た。
「どないしたん?香織はん?」
清水さんが上品な笑顔を向け、私と彼の間に割る様に入ってきた。
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続け様にそう言うと、私の額に手を当てて来た。それなりに冷たくて、気持ちがよかった…。
「だ、大丈夫です…。」
「無理したら、あかんで?」
清水さんはそう言うと、彼の方に向き直った。
「悪いなぁ。この娘具合悪いみたいねん。またの機会にな?」
そう言うと、清水さんは私を引っ張り、休憩室に押し込んだ。
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