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7章:廻り
2 捜索
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翌日の昼、いつもの様に、校内の日陰のベンチで、彼女らが来るのを待った。彩は先に学食に行って場所取りをしに行った。
噛んでいたガムを膨らまし、風船を作って暇潰しをしていた。
夏とは言え、良い天気過ぎる…。視界に入る、限りでは、雲は数える程度しかない。
近くにある樹木からは、蝉が大合唱している。イヤホンをしているとは言え、流石に耳につく…。
しかし、麻由美と香織は一向に来る気配がない…。
講義が長引いているのか…。そう思いかけた、その時、麻由美が息を切らしながら、こちらに駆けてくる。
表情から察するに、香織は一緒じゃないらしかった。
「香織、見てないよね?」
「クラス違うんだから、私が見てるわけないでしょ?」
「そうだよね…。実は、朝から大学来てないみたいで…。連絡入れたんだけど、繋がらなくて…。」
あの娘に限って、遅刻や寝坊と言うのは考えにくい…。ましてや、もうお昼も良い所だ。
私も、電話を掛けてみた。応答はあるものの、出る気配はない…。
メールやメッセージ等で、連絡を入れてみるが、既読もしない…。
「何かあったんじゃ…。」
「何かって?」
「倒れてたり…。」
この暑さだ、室内で倒れていても不思議ではない…。そう考える、じっとはしていられない。だが、私は肝心な情報を知らない。
「香織ちゃんの、自宅はどこ?」
「それが、私も詳しい所は知らなくて…。ただ、ここからそんなに遠くない事くらい…。」
どうしたものかと、頭を悩ませていると、痺れを切らしたのか、彩も戻って来た。
「遅い!」
「それどころじゃないんだって…。」
彩にも説明し、住所を聞いたが、答えは私たちと一緒だった。
「私は知らないけど、九条さんか古川さんなら知ってるんじゃない?」
そう言って、電話を掛け始めた。
彼も合流し、彼女の自宅に出向いた。
チャイムを鳴らすが、誰かが出てくる気配はない。鍵も掛かっており、ドアノブを鳴らすが、開かない…。室内からは物音もしない…。
九条さんが、予め管理会社から借りて来た、合鍵を使い、扉を開けた。
玄関は一人で入るのがやっとのくらいの狭さ…。右側にはキッチンと洗濯機が並んでいる。
細い廊下の突き当りの右側に、部屋があり、机やベッドが置いてある。几帳面な性格なのか、床に散らばっている物は何一つなく、本やテキストは、棚の中に奇麗に仕舞われている。
ベッドの上に乗っているタオルケットも奇麗に整えられている。肝心な彼女の姿は見当たらない…。
「どこ行っちゃったんだろう…。」
彩が窓を開け、物干し場を見るが、居ない様だった。
その他、トイレや浴室、ロフトなども見たが、どこにもいない。
「これ…。」
ベッドの近くでしゃがんでいた、九条さんが、呟いた。
「どうしたんですか?」
「ここだけ埃が溜まってない。多分、日頃から、ベッド折りたたんでいたんだろうね。」
確かに、ベッドのローラーに合わせて、溝の様になっていた。
「だけど、今は少しだけ、溜まり始めている。」
溝をなぞる様に、指でふき取ると、小さい白い埃が絡め取られた。
「それだけじゃない。浴室のタイルも湿って居なかったし、棚の上に乗っている、観葉植物も、乾いている。」
言われた棚の上を見ると、緑の丸い苔の様な物に、モミジの葉が伸びている、不思議な植物が乗っている。そのすぐそばに、霧吹きが置いてあることから、水やりは欠かさなかったと、推測で来た。
「極めつけは、このマグカップ。」
キッチンの水切りラックに乗っていた、黒いマグカップを取り上げる。
「香織ちゃんは毎朝コーヒーを自分で淹れて飲んでるらしい。だけど、今日入れた分の使用済みフィルターもないし、このマグカップからは、コーヒーの香りが一切しない。」
「それはつまり?」
「今日の朝の段階で、ここに居なかった事になる。」
噛んでいたガムを膨らまし、風船を作って暇潰しをしていた。
夏とは言え、良い天気過ぎる…。視界に入る、限りでは、雲は数える程度しかない。
近くにある樹木からは、蝉が大合唱している。イヤホンをしているとは言え、流石に耳につく…。
しかし、麻由美と香織は一向に来る気配がない…。
講義が長引いているのか…。そう思いかけた、その時、麻由美が息を切らしながら、こちらに駆けてくる。
表情から察するに、香織は一緒じゃないらしかった。
「香織、見てないよね?」
「クラス違うんだから、私が見てるわけないでしょ?」
「そうだよね…。実は、朝から大学来てないみたいで…。連絡入れたんだけど、繋がらなくて…。」
あの娘に限って、遅刻や寝坊と言うのは考えにくい…。ましてや、もうお昼も良い所だ。
私も、電話を掛けてみた。応答はあるものの、出る気配はない…。
メールやメッセージ等で、連絡を入れてみるが、既読もしない…。
「何かあったんじゃ…。」
「何かって?」
「倒れてたり…。」
この暑さだ、室内で倒れていても不思議ではない…。そう考える、じっとはしていられない。だが、私は肝心な情報を知らない。
「香織ちゃんの、自宅はどこ?」
「それが、私も詳しい所は知らなくて…。ただ、ここからそんなに遠くない事くらい…。」
どうしたものかと、頭を悩ませていると、痺れを切らしたのか、彩も戻って来た。
「遅い!」
「それどころじゃないんだって…。」
彩にも説明し、住所を聞いたが、答えは私たちと一緒だった。
「私は知らないけど、九条さんか古川さんなら知ってるんじゃない?」
そう言って、電話を掛け始めた。
彼も合流し、彼女の自宅に出向いた。
チャイムを鳴らすが、誰かが出てくる気配はない。鍵も掛かっており、ドアノブを鳴らすが、開かない…。室内からは物音もしない…。
九条さんが、予め管理会社から借りて来た、合鍵を使い、扉を開けた。
玄関は一人で入るのがやっとのくらいの狭さ…。右側にはキッチンと洗濯機が並んでいる。
細い廊下の突き当りの右側に、部屋があり、机やベッドが置いてある。几帳面な性格なのか、床に散らばっている物は何一つなく、本やテキストは、棚の中に奇麗に仕舞われている。
ベッドの上に乗っているタオルケットも奇麗に整えられている。肝心な彼女の姿は見当たらない…。
「どこ行っちゃったんだろう…。」
彩が窓を開け、物干し場を見るが、居ない様だった。
その他、トイレや浴室、ロフトなども見たが、どこにもいない。
「これ…。」
ベッドの近くでしゃがんでいた、九条さんが、呟いた。
「どうしたんですか?」
「ここだけ埃が溜まってない。多分、日頃から、ベッド折りたたんでいたんだろうね。」
確かに、ベッドのローラーに合わせて、溝の様になっていた。
「だけど、今は少しだけ、溜まり始めている。」
溝をなぞる様に、指でふき取ると、小さい白い埃が絡め取られた。
「それだけじゃない。浴室のタイルも湿って居なかったし、棚の上に乗っている、観葉植物も、乾いている。」
言われた棚の上を見ると、緑の丸い苔の様な物に、モミジの葉が伸びている、不思議な植物が乗っている。そのすぐそばに、霧吹きが置いてあることから、水やりは欠かさなかったと、推測で来た。
「極めつけは、このマグカップ。」
キッチンの水切りラックに乗っていた、黒いマグカップを取り上げる。
「香織ちゃんは毎朝コーヒーを自分で淹れて飲んでるらしい。だけど、今日入れた分の使用済みフィルターもないし、このマグカップからは、コーヒーの香りが一切しない。」
「それはつまり?」
「今日の朝の段階で、ここに居なかった事になる。」
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