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4章:調べ
1 買足Ⅱ
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ホームセンターから家具センターまでは車で大体十分程。当然だが種類や色も豊富だった。藤吉先生は座椅子を物色しに、入店早々に別れてしまった。新庄さんは特に買うものもないらしく、棚選びを手伝ってくれている。
選ぶと言っても、教材やノート、本が入ればそれでいいので、実際はカラーボックスでも構わないのだが、大は小を兼ねるわけで。それに将来的に考えても、少し大きめの方が良いと思う。
それに、小説が好きで、小さい頃から親や妹に隠れてこそこそ呼んでいた。初めのうちは、学校に図書館から借りた蔵書を呼んでいた。が、それが妹に見つかり、隠された。返せないとなると、流石の優しかった図書の先生も咎めなくてはいけなくなり、他の教師たちからも怒られた。私が失くしたと決めつける教師も少なくなかった。
結局、自宅の妹の机の引き出しから見つかったのだが、両親はそのことを教師たちに黙っていた。むしろ、ちゃんと探さないからと、言い張った。だから本を借りるのは辞め、暫くの間は、教科書に載っている、教材用の小説やテストの問題になっている小説の切り抜きなどを読み漁っていた。
お陰で、その年の国語の教科書の小説の部分は、目を瞑っても、暗唱できるほどになっていた。
当然それも飽きるわけで、何度も商店街の古本屋や個人書店の様な所によっては、面白そうな本は無いかと探した。お金は持っていなかったから、手に取って表紙を眺めるだけだった。当時、立ち読みをすれば、怒られると思っていた。
更に、学校帰りだと、それはそれで問題になると思い、ランドセルはおばあちゃんがよく居眠りしている、靴屋の中の端っこに隠していた。その行動が古本屋のおじさんに見つかり、一時はどうなる事かと思ったが、次の日から私が帰って来るタイミングを見計らって、処分する様なカビやシミの付いた本と飴玉をランドセルに忍ばせてくれた。
飴玉は私に食べて欲しかったのだろうけど、全て、妹の気を引くためのアイテムとなった。
貰った本は、瓶ケースや布団の下に隠していた。今でも癖なのか、読み途中の本は、枕の下に忍ばせることもしばしば。
だから、堂々と本を置けるスペースが私には新鮮だった。
結局のところ、スライドできる物を購入した。
買ったは良いが、肝心の組み立てをするとなると、まだ解決していない。
「俺もこの後、暇なら良いんだが、生憎、予定が詰まっててな。」
「私は暇だけど、戦力にならないからなぁ…。」
「大丈夫ですよ。運んでもらえるだけで、十分です。」
「そうか…。」
二人とも納得してない様だった。寧々がよく自分の楽器のメンテしてるところを見るので、彼女なら得意そうだ。それに、急ぐ事でもない。
それを説明しつつ、送ってもらう事に成った。
「あ。」
しばらく走った後、新庄さんが何かを思い出したように、呟いた。
「彰君は?」
「なるほど…。ってか最初から行けばよかったな。」
「迷惑じゃないですかね…。」
「ちょっと待って、聞いてみる。」
新庄さんがスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
「どっちにしろ俺は行かなきゃならないから、棚と明音さん持って行って。」
そう言えば、どうして二人は今日、一緒だったのだろう。多少気にはなったが、余計な詮索はしない方が良さそうだと思った。
「あのさ。アンティークとは言え、家具も売ってるウチに、『棚買ったから、組み立てて』って、新手の嫌がらせかと思ったよ。」
華宵園に着いて早々に四代目から有難いお言葉を頂いた。
「まぁ、そう言う事言わずに、頼むよ。」
新庄さんが出されたお茶を啜りながら、答えた。
「誰も引き受けないとは、言ってないでしょうに…。」
彰さんが店の奥に、工具を持ってくる様に指示した。
改めて店内を見回す。確かに、装飾が付いた棚や箪笥。それ以外にも、テーブルや机、と言った家具もある。陶器で出来たお皿や、奇麗な青いグラス等の食器も几帳面に並べられている。
その中で一つ気になったのがあった。コーヒーを抽出するためのドリッパーとサーバー、それとスタンドがセットになっている物だった。
選ぶと言っても、教材やノート、本が入ればそれでいいので、実際はカラーボックスでも構わないのだが、大は小を兼ねるわけで。それに将来的に考えても、少し大きめの方が良いと思う。
それに、小説が好きで、小さい頃から親や妹に隠れてこそこそ呼んでいた。初めのうちは、学校に図書館から借りた蔵書を呼んでいた。が、それが妹に見つかり、隠された。返せないとなると、流石の優しかった図書の先生も咎めなくてはいけなくなり、他の教師たちからも怒られた。私が失くしたと決めつける教師も少なくなかった。
結局、自宅の妹の机の引き出しから見つかったのだが、両親はそのことを教師たちに黙っていた。むしろ、ちゃんと探さないからと、言い張った。だから本を借りるのは辞め、暫くの間は、教科書に載っている、教材用の小説やテストの問題になっている小説の切り抜きなどを読み漁っていた。
お陰で、その年の国語の教科書の小説の部分は、目を瞑っても、暗唱できるほどになっていた。
当然それも飽きるわけで、何度も商店街の古本屋や個人書店の様な所によっては、面白そうな本は無いかと探した。お金は持っていなかったから、手に取って表紙を眺めるだけだった。当時、立ち読みをすれば、怒られると思っていた。
更に、学校帰りだと、それはそれで問題になると思い、ランドセルはおばあちゃんがよく居眠りしている、靴屋の中の端っこに隠していた。その行動が古本屋のおじさんに見つかり、一時はどうなる事かと思ったが、次の日から私が帰って来るタイミングを見計らって、処分する様なカビやシミの付いた本と飴玉をランドセルに忍ばせてくれた。
飴玉は私に食べて欲しかったのだろうけど、全て、妹の気を引くためのアイテムとなった。
貰った本は、瓶ケースや布団の下に隠していた。今でも癖なのか、読み途中の本は、枕の下に忍ばせることもしばしば。
だから、堂々と本を置けるスペースが私には新鮮だった。
結局のところ、スライドできる物を購入した。
買ったは良いが、肝心の組み立てをするとなると、まだ解決していない。
「俺もこの後、暇なら良いんだが、生憎、予定が詰まっててな。」
「私は暇だけど、戦力にならないからなぁ…。」
「大丈夫ですよ。運んでもらえるだけで、十分です。」
「そうか…。」
二人とも納得してない様だった。寧々がよく自分の楽器のメンテしてるところを見るので、彼女なら得意そうだ。それに、急ぐ事でもない。
それを説明しつつ、送ってもらう事に成った。
「あ。」
しばらく走った後、新庄さんが何かを思い出したように、呟いた。
「彰君は?」
「なるほど…。ってか最初から行けばよかったな。」
「迷惑じゃないですかね…。」
「ちょっと待って、聞いてみる。」
新庄さんがスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
「どっちにしろ俺は行かなきゃならないから、棚と明音さん持って行って。」
そう言えば、どうして二人は今日、一緒だったのだろう。多少気にはなったが、余計な詮索はしない方が良さそうだと思った。
「あのさ。アンティークとは言え、家具も売ってるウチに、『棚買ったから、組み立てて』って、新手の嫌がらせかと思ったよ。」
華宵園に着いて早々に四代目から有難いお言葉を頂いた。
「まぁ、そう言う事言わずに、頼むよ。」
新庄さんが出されたお茶を啜りながら、答えた。
「誰も引き受けないとは、言ってないでしょうに…。」
彰さんが店の奥に、工具を持ってくる様に指示した。
改めて店内を見回す。確かに、装飾が付いた棚や箪笥。それ以外にも、テーブルや机、と言った家具もある。陶器で出来たお皿や、奇麗な青いグラス等の食器も几帳面に並べられている。
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