探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXⅥ:反撃開始

#2

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 時刻は早いもので、もう16時になろうとしていた。ホール前の扉前には、ホテルのスタッフたちに交じって、警察の人間もチラホラと居いる。当然一般の客も居るのだが…。
 「石井さんって、鼻、利くタイプですか?」
 「まぁね…。だけど、こんなに居るとは思わなかったね…。」
 1階エントランスにて、ホームズの久本と他組対の刑事20人態勢で、見回り強化をしているのだが…。戦力を集めていて正解だった。
 長年…ではないが、組対に在籍し、現場数をそれなりにこなしていくと、カタギかそうでないかの違いは分かってくる…。見た目で簡単に見分けがつく場合もあるが、普通はそうはいかない…。奴らも一般人と変わらない服装や髪形をしていることが多いため、端からは見分けがつかない…。
 だが、私や組対の人間は常日頃、そんな連中と顔を突き合わせているため、なんとなく分かってしまう。
 それは、久本も同じらしく、刀は持っていないが、神経を張り巡らせているのは、感じられる。
 「いつでも戦えるようにしておいて下さい。偶然か何かでこんなに構成員を集結させているわけないですから…。」


 このホテルは敷地面積も広く、フロア数も多いため、全てを調べ尽くすなんて、かなりの人員を用意しないと、難しい話だ。それに付け加え、入り組んだ通路が多い、地下フロアは、地上階とは比べものにならない程、捜査するのには骨が折れる…。監視カメラも少なく、昔ながら足で地道に稼ぐしかない。
 幸い、俺が仕切る部下の刑事たちは、体力にかなりの自信がある連中を選抜した。足や戦闘に関しては、精鋭たちだ。
 だが、ホームズの亮太といわれる男は、一目見た瞬間から、分かった。ここにいる連中、束にしても敵うかどうかだ…。
 腕や脚の筋肉の付き方もさることながら、走っていても軸がぶれず、安定している。それだけではなく、息切れ一つしていない。
 肉体作りだけでなく、体力面でもかなり強化されている。
 「なんかスポーツとかやってたのか?それだけ体力あるって、相当だぞ。」
 学生の頃、運動系の部活に入っていたか、陸上競技に打ち込んでいたか…。そうでないと、年齢的に説明が付かない。
 「いや、それが鍛え始めたのは、ホームズに入ってからなんですよ…。昔から体力だけはあって、持久走とかマラソン大会とかは得意でした。何度か陸上部とか、サッカー部に誘われたことはあったんですが、家庭環境が良くなくて、入れなかったんですよね。」
 ということは、亮太の体力と筋力は、持つべくして与えられた、文字通り天賦の才能。
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