探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXV:奪還作戦

#27

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 「ってなことがあって、それ以降い石井の方が久本にべったりになってな…。」
 柿崎刑事の話に、最初に食いついたのは聞き耳を立てていた柏木だった。
 「え?キュー君って、剣術使えるの?リュー君知ってた?」
 その質問に日下部が頷いた。
 「剣術かどうかは知らなかったけど、何かしら戦闘技術は持ち合わせているのは知っていた。センスだけで言えば、タケといい勝負だが、いつもどこか本気じゃないような気がしていたが…。そうか、剣術か…。普段素手でやる俺たちのやり方だけでは、限界があったのか…。」
 今の説明を聞いて、なるほど…。とは私の中ではならなかったが、ホームズに居て、未だにメンバーについて知らないことがあるとは驚きだ。
 それほど、本人が自分の事を話してこなかった。それが何故なのか…。これだけ、過去に癖のある人が集まってできた探偵事務所のため、同じメンバーといえど、無駄に勘繰ってしまう癖ができてしまった…。
 「ま、これで一つ分かった。ウチの戦力が今まで以上に上がる。ちょっと、車の方に行って来る。取ってきたいものがある。」
 日下部はそう言うと、部屋を出て行った。


 「例のスマートウォッチとスマートフォン、の解析完了したぜ。」
 相沢がノートパソコンを広いテーブルの上に置いた。
 「俺が作ったこのスマートウォッチには、GPSのほかに、スマートフォンとの通信接続が可能だ。それは他のメンバーでも知ってるよな?」
 「えぇ、それを利用して、スマホ出さなくても、通話やメッセージのやり取りができるよね?」
 柏木が答えた。
 「あぁそうだ。本来はそう使うんだが、このスマートウォッチはそれの機能を使って、紛失時の時のための“探索モード”ってのがある。探索モードは、近くにあるスマホと通信接続して、スマートウォッチの位置情報を共有させることができる。
 本来なら、こいつが紛失したときに使うようにって、入れておいた機能なんだが、リンさんはそれを逆手に取った方法を使った。」
 「逆手って?」
 「スマホから、スマートウォッチの端末情報を消して、一番近くのスマホと通信接続させたってことでしょ?」
 これだけヒントを出されれば、嫌でもわかってしまう。
 「リンさんは、スマホから、端末情報を削除して、自分のスマホからスマートウォッチの位置情報を検索できなくする。そうするとスマートウォッチは、自動的にGPSから、消費電力の少ない、探索モードに切り替わって、近づいてきた、任意のスマホから位置情報を提供してもらう。」
 「そっか!」
 柏木が閃いた様ようだ。
 「任意の近くのスマホっていえば、犯人のスマホ。それに、通信接続できれば、きなこが入り込む隙ができるってことか。」
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