探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXV:奪還作戦

#19

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 「先ほどから、我々を尾行けているのは、刑事さんでしょうか?」
 男の声が、通路内に響いた。完全に息を殺していたはずだが、バレてしまったらしい。
 私は物陰から、声を発した。
 「警視庁の捜査一課!貴方たちは何者ですか?」
 彼らはおそらく、クラブ・ジョーカーの構成員だろう…。幹部クラスかそれとも、下っ端か…。どちらにせよ、何かしら武器を隠し持っていても、可笑しくはない。慎重に彼らの正体を少しでも暴ければ、これから来る応援部隊に情報を提供できる。
 「それは、職質でしょうか?刑事さん。もしそうなら、任意のはずですので、名乗る義務はないと思いますがね。」
 「では、質問を変えます。ここで一体何をなさっているんですか?」
 「それは、こちらのセリフですよ、刑事さん。刑事さんこそ、こんなところで何をなさっているんですか?」
 「質問を質問で返さないで下さい。もう一度聞きます。貴方がたは、こんなところで一体何を企んでいるんですか?クラブ・ジョーカー。」
 私がそういうと、男はクスクスと笑い出した。
 「おやおや、正体がバレてしまっているようですね…。これは、御見それしました。」
 「ふざけないで!質問に答えて下さい!次の返答次第では、貴方たちを拘束します!」
 私のその言葉に、他の男たちも、大声で笑い始めた。
 「刑事さんの方こそ、ふざけないで下さいよ。貴女一人で、何ができるっていうんですか。」
 男がそう言った直後、背後から気配を感じ振りむいたころには、既に遅かった。
 「ぐぁ!」
 呼吸ができるようになるまで、数秒を要した。どうやら、腹部を蹴られ、そのまま吹き飛んでしまったらしい…。
 「やっと対面できましたね、刑事さん。」
 4人目の男に引っ張り起こされ、無理やりさっきまで話していた男と顔を突き合わされた。男は、顔の右上に縫い傷の様なものがあり、あとは無精髭が特徴的だった。
 「まぁ、もっと美人刑事さんとはお喋りしていたいですが、我々も先を急ぎますので、手荒ではありますが、少々眠っててもらいます。」
 4人目の男が、拳を振り上げた瞬間、私は思わず、目を瞑ってしまった。次に来る、強い衝撃から、少しでも逃げたかったから…。
 だが、いつになっていも私の体に痛みは来なかった。遂に痛み感じなくなってしまったのかと、恐る恐る目を開けた。
 目の前には、確かに振り下ろされたであろう拳と、それを遮るように警棒が交わっていた。
 「女相手に本気で殴りに来るとは、感心しねぇな。」
 その声と共に、警棒が拳を弾き飛ばし、男は後ろによろめいた。
 「誰だ?」
 「警視庁組織犯罪対策課の河辺光夫。以後、お見知りお気を。」
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