探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXV:奪還作戦

#18

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 「クドーが一人で地下に?」
 工藤刑事と一緒に組んでいたはずの男性刑事がそう無線で本部に伝えてきた。
 『はい…。内緒にしておけと、工藤さんには言われたんですが、流石に単独行動はいかがなものかと思いまして…。』
 「連絡は取れないの?」
 『何度か無線で呼びかけて見たんですが、どうやら、電波が届かないらしくて…。一応、携帯も鳴らしてみたんですが不通で…。』
 「ちょっと危険かもね…。竜さん、行けます?」
 真紀が日下部にそう訪ねた、
 「こっちも今は動けない…。」
 「じゃぁ、私が行こうか?どうせ秋山君も動けないだろうし…。」
 「お願いします。」
 日下部のその言葉を聞き、真紀は席を立ち、歩き始めた時、会議室のドアが開いた。
 「マキさんが動く必要は無いです。
 ドアを開けたのは、土屋と行動を共にしていたはずの、久本だった。彼の後ろには、見慣れない男性2人と女性が1人見える。
 「キュー君。ツチヤさんと一緒だったんじゃないんですか?」
 柏木がそう訪ねた。
 「えぇ、途中までは。ですが、クラブ・ジョーカーの情報を調べろと、ツチヤさんに言われまして、調べてました。」
 「それについては、俺たちが説明する。林田ぁ。」
 「はい!」
 久本の後ろにいた男2人組が、会議室の中に入って来た。
 それを見た他の刑事たちがざわめき始めた。
 「柿崎隊長…。」「林田先輩と、石井さんまで…。」「組対の最強チーム…。」「今回の事件と関係無いだろ…。」「いや、暴力団が絡んでいるとなると、動かないわけもいかないだろ…。」そんな言葉がチラホラ聞こえてきた。
 「遅くなってごめんね、刀根ちゃん。その代わり、データは沢山持ってきたから、堪忍してな?」
 柿崎と呼ばれた男性とは別の男性刑事が、刀根刑事のパソコンを借りると、なにやらデータを転送し始めた。
 「久本君?私が行かなくて良いってことは、何か、先手は打っているってことで良いのね?」
 真紀さんがそう訪ねた。
 「はい。既に警視庁一の喧嘩師が地下3階に向かってます。恐らくもう到着する頃かと…。」


 倒れていた刑事達と分かれて、数分が過ぎた。ようやく3人組の男を見つけた。
 無線からの返信や通信が無いことから、電波が届いていないのだろうと、察しがついた。良かった。上に、一人置いておいて。こうなってしまえば、二人とも、通信する手段がなくなってしまう…。彼の真面目な性格を少しばかり利用させてもらったが、これで、何とか、地下3階で“何かが起きている”事は本部に伝わるはずだ。
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