探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
258 / 281
ファイルXV:奪還作戦

#10

しおりを挟む
 「クラブ・ジョーカー…。最近何かと話題な連中ですね…。」
 本郷は顎に手を当てた。
 「何か知ってそうだな…。」
 「…実は、“大親父”が気にしていてな…。他の武闘派の組の主力メンバーが今関東、それも、東京に集結していて、近々抗争にまで発展するんじゃないかって俺ら下っ端の組の間ではかなり騒がれていて…。その理由が、クラブ・ジョーカーだって言うんですよ…。」
 「大親父ってことは、金条組か…。」
 金条組。関東一帯を中心に日本各地にある暴力団組織の頂点に君臨する巨大な組だ…。
 当然過激な参加の組織も存在するが、聞いたところ、義理人情に熱い組織らしい…。だから、有名な組織ではあるものの、これと言った大きな問題は起きていない…。
 それも本郷が言う、大親父、敷島一。この男は、日下部が言う限りだと、義理人情に熱く、滅多なことでは怒ることも傘下の組の人間を破門にすることも無い…。比較的穏やかな男らしい。
 だが、敵対する、それも自国に対する組織は、全力で排除するらしい…。
 クラブ・ジョーカー。拳銃の密輸や政治家や警察に対する挑発行為などを考えれば、敷島が黙っているはずが無い…。
 「分かった。敷島のおやっさんなら何か知っていかもしれないな…。そっちに出向いてみるよ。」
 「お役に立てず、申し訳ないです。」
 「いや、大いに役に立った。感謝する。」
 俺たちは席を後にし、事務所を出ようとしたとき、呼び止められた。
 「久本さん!我々も、何か分かりましたら、報告します。」
 「それは有り難いが、下っ端の組員がそんな事して、良いんですか?」
 「俺たちは物理的な力も、経済力も特別あるわけでもありません…。ですが、こうやって、お親父の元で未だに商いやらせてもらえてるのは、全て大親父のお陰なんです。
 だから、少しでも、大親父の役に立ちたいんです。」
 暴力団と一言で言っても、彼等の様に、人情に熱い人達もいる…。当然、警察には目の敵にされるが、彼等を理解すれば、戦闘力以外にも、情報源として、かなりのものとなる。
 日下部や秋山は、それを理解して、こう言った、下っ端の、暴力団組織とも関係を持ち、いざという時に、情報を収集しやすくしている。
 「それはどうも。敷島のおやっさんにも、そう伝えておくよ。」
 俺がそう言うと、彼等は深々と頭を下げた。


 「敷島一か…。できれば、会いたくなかったがな…。」
 緑流会の事務所を出て、次の行き先を金条組を述べた時、河辺がそうつぶやいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら55歳の中年オバさんでした

綾羽 ミカ
ファンタジー
目が覚めた瞬間、全身に感じる違和感。 いや、これは違和感というよりも、現実の重み……? 「ん?……腕が……太い?」

暴れん坊小町

クライングフリーマン
ミステリー
京大卒で「斎王さま」に選ばれるほど容姿端麗。「警視」の肩書きを持つ魅力ある女性警察官には、妙なあだ名があった。それは。「暴れん坊小町」。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Energy vampire

紫苑
ミステリー
*️⃣この話は実話を元にしたフィクションです。 エナジーヴァンパイアとは 人のエネルギーを吸い取り、周囲を疲弊させる人の事。本人は無自覚であることも多い。 登場人物 舞花 35歳 詩人 (クリエーターネームは 琴羽あるいは、Kotoha) LANDY 22歳  作曲家募集のハッシュタグから応募してきた作曲家の1人 Tatsuya 25歳 琴羽と正式な音楽パートナーである作曲家 沙也加 人気のオラクルヒーラー 主に霊感霊視タロットを得意とする。ヒーラーネームはプリンセスさあや 舞花の高校時代からの友人 サファイア 音楽歴は10年以上のベテランの作曲家。ニューハーフ。 【あらすじ】 アマチュアの詩人 舞花 不思議な縁で音楽系YouTuberの世界に足を踏み入れる。 彼女は何人かの作曲家と知り合うことになるが、そのうちの一人が決して関わってはならない男だと後になって知ることになる…そう…彼はエナジーヴァンパイアだったのだ…

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

警視庁鑑識員・竹山誠吉事件簿「凶器消失」

桜坂詠恋
ミステリー
警視庁、ベテラン鑑識員・竹山誠吉は休暇を取り、妻の須美子と小京都・金沢へ夫婦水入らずの旅行へと出かけていた。 茶屋街を散策し、ドラマでよく見る街並みを楽しんでいた時、竹山の目の前を数台のパトカーが。 もはや条件反射でパトカーを追った竹山は、うっかり事件に首を突っ込み、足先までずっぽりとはまってしまう。竹山を待っていた驚きの事件とは。 単体でも楽しめる、「不動の焔・番外ミステリー」

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...