探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXV:奪還作戦

#10

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 「クラブ・ジョーカー…。最近何かと話題な連中ですね…。」
 本郷は顎に手を当てた。
 「何か知ってそうだな…。」
 「…実は、“大親父”が気にしていてな…。他の武闘派の組の主力メンバーが今関東、それも、東京に集結していて、近々抗争にまで発展するんじゃないかって俺ら下っ端の組の間ではかなり騒がれていて…。その理由が、クラブ・ジョーカーだって言うんですよ…。」
 「大親父ってことは、金条組か…。」
 金条組。関東一帯を中心に日本各地にある暴力団組織の頂点に君臨する巨大な組だ…。
 当然過激な参加の組織も存在するが、聞いたところ、義理人情に熱い組織らしい…。だから、有名な組織ではあるものの、これと言った大きな問題は起きていない…。
 それも本郷が言う、大親父、敷島一。この男は、日下部が言う限りだと、義理人情に熱く、滅多なことでは怒ることも傘下の組の人間を破門にすることも無い…。比較的穏やかな男らしい。
 だが、敵対する、それも自国に対する組織は、全力で排除するらしい…。
 クラブ・ジョーカー。拳銃の密輸や政治家や警察に対する挑発行為などを考えれば、敷島が黙っているはずが無い…。
 「分かった。敷島のおやっさんなら何か知っていかもしれないな…。そっちに出向いてみるよ。」
 「お役に立てず、申し訳ないです。」
 「いや、大いに役に立った。感謝する。」
 俺たちは席を後にし、事務所を出ようとしたとき、呼び止められた。
 「久本さん!我々も、何か分かりましたら、報告します。」
 「それは有り難いが、下っ端の組員がそんな事して、良いんですか?」
 「俺たちは物理的な力も、経済力も特別あるわけでもありません…。ですが、こうやって、お親父の元で未だに商いやらせてもらえてるのは、全て大親父のお陰なんです。
 だから、少しでも、大親父の役に立ちたいんです。」
 暴力団と一言で言っても、彼等の様に、人情に熱い人達もいる…。当然、警察には目の敵にされるが、彼等を理解すれば、戦闘力以外にも、情報源として、かなりのものとなる。
 日下部や秋山は、それを理解して、こう言った、下っ端の、暴力団組織とも関係を持ち、いざという時に、情報を収集しやすくしている。
 「それはどうも。敷島のおやっさんにも、そう伝えておくよ。」
 俺がそう言うと、彼等は深々と頭を下げた。


 「敷島一か…。できれば、会いたくなかったがな…。」
 緑流会の事務所を出て、次の行き先を金条組を述べた時、河辺がそうつぶやいた。
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