探偵注文所

ファイルXV：奪還作戦

#3

　「クラブ・ジョーカーに着いて、ある程度分かりました。」
　宮間さんが戻ってきた。
　「ってことは、連絡着いたって事？」
　宮間さんは頷き、日下部さんの弄っていたパソコンを借り、操作しだした。
　「クラブ・ジョーカーは1年前に、正式に二代目、竹橋に引き継がれています…。ですが、その数か月前、妙な事件が起きました。」
　宮間さんはとある、ニュースサイトを表示した。
　その記事は、男性が交通事故で死亡した内容だった。事故死とはいえ、全国各地で起きている…。テレビのニュースや新聞などで取り上げられることなど、殆どない…。事故があった事自体、知らないこともある…。
　「この事故の被害者の、秋葉拓斗は、事故が遭った前日までに、クラブ・ジョーカーの幹部でした。」
　「でしたって事は、組織を抜けたって事？」
　天木さんが聞き返した。
　「はい。ですが、とある理由で、組織を脱退しました。それがこれです。」
　次に映し出されたのは、警察のデータベースの前科履歴だった。
　「彼は、一度銃の密売容疑で、検挙されていました。
　ですがそれは、竹橋が仕組んだダミーでした…。秋葉は、密輸当時、娘の小学校の運動会に参加していました。それなのに、警察はそれを無かったことにし、彼を実刑にしました。そして、この事件のあった、数日前に仮釈放されています。」
　仮釈放…。刑務所内では、更生の容姿が見られた受刑者に与えられる権利だ。それ程彼は、刑務所内で、かなり優秀だったという事が分る…。
　「一度事務所に戻った所を見るに、組織を抜ける覚悟で居たんでしょう…。その証拠に、彼の所持品に、十徳ナイフがありました…。」
　「だが、交通事故扱いで、殺された…。更には組を抜けたことにされていた…。体に欠損は？」
　日下部さんが状況を整理しながら、そう訊ねた
　「それが、事故で受けた損傷意外、体の欠損はありません。小指も耳も健在でした…。
　ですが、一つだけある筈のものが存在しないんですよ。」
　宮間さんはそう言うと、画像に移った左手をクローズアップした。
　「見ての通り、指輪が存在しないんですよ。娘の運動会に参加する程、家族を溺愛していたのに、この時だけ、指輪をしていないのは、確かに妙です…。」
　このことから、考えられることはただ一つ…。それは当時の警察にそれを確認する必要がありそうだ…。