探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXV:奪還作戦

#1

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 私が広間がある階に到着し、一番近くの潜入捜査員の刑事に、メモ帳と、日下部とかいうホームズの調査員に渡された、無線機の子機を渡した。どうやら、この無線機は、スライダー体質の捜査員が発する電磁波を掻い潜る事が出来るらしい…。
 「原理は細かい事は分からないが、これが今使える唯一の通信機器らしい…。」
 「なるほど…。だが良いのか?民間企業の通信機器なんて借りちまって…。傍受してるのは当然として、情報を横流しされてたなんてなれば、警察全体の信用に関わるぞ…。」
 「それは問題ない…。親機の方は刀根と、工藤と私が管理している。それに、あいつ等が、私たちを警察を裏切る様な事は無い。」
 「断言しちまって良いのかよ…。」
 「問題ない。刑事の勘ってやつだ。」
 私がそう言うと、彼は納得した様に、それを受け取った。
 「会場内は任せろ。何かあれば、報告する。だが、何かあるんだったら、よろしく頼む。現場はお前の方が、鼻が利きやすいからな…。」
 彼はそう言うと、ネクタイを締め直し、会場内に戻って行った。
 それを見届け、私は自分の持ち場に戻るため、スタッフ用の通路のある扉を開けた…。

 「交通課からのデータ上がって来ました。写真の男の名前は、赤羽勇五…。
 マフィア組織、クラブ・ジョーカーの幹部の一人です。ここ数カ月で、勢力を伸ばしているマフィア組織ですね…。」
 刀根刑事が資料を広げ、そう言った。資料には、男の免許証の画像や、Nシステムの写真、はたまた空港の監視カメラの映像までもが集約されていた。
 「凄い…。こんな短時間で、こんな量のデータを集められるなんて…。」
 「色々な課や部署には知り合いが居るので、それなりに集められます。今、組対に頼んで、クラブ・ジョーカーの情報を集めています…。と丁度良いタイミングで、上がって来ました。
 ボスの名前は“神保壱成”昔は、かなり顔の幅を利かせては居て、何度か組対とはやり合ってはいたみたいですが、ここ数年は、長年の持病が祟って、今では、2代目の若頭、“竹橋宗次”に組を任せているとのことです…。
 ですが、2代目になってからは、あまりいい話を聞かないらしく、この間も、銃の密売で下っ端が何人かウチに捕まったらしいです。」
 「銃の密売…。相手は中国か…。それとも、
ロシアか…。こういうのは、リューかミヤマが詳しいと思うけど…。どう?」
 アマキさんが、二人に訊ねた。
 「恐らく、そのどちらかで間違いないだろうが…。マフィアとて、そんな真似するかは疑問だな…。日本の暴力団組織もそれなりに勢力はある…。抗争になるんだったら、俺に情報くらい来ても良い筈なんだが、そんなものは、生憎聞いた事は無いな…。」
 日下部さんに続く様に、宮間さんも答えた。
 「私も、名前しか聞いた事がありませんね…。確かに、ここ最近何やら噂を耳にすることが増えましたが、目ぼしい情報は何も…。」
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