探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
248 / 281
ファイルXIV:追跡調査

#15

しおりを挟む
 「クドーさん。答えは『何も残っていない』です。何も残っていないってことは、このスマホそのものが、重要だということです。」
 柏木さんはそういうと、リンさんのスマホの電源を落とした。
 「これは、ソウさんに渡します。おそらく、あの人なら、何とかできると思う…。」
 その言葉の直後、まるでタイミングを見計らったかのように、相沢さんと真紀さんが部屋に戻ってきた。
 「話は粗方聞いていた。寄越せ、柏木。」
 相沢さんはそういうと、柏木さんからスマホを受け取った。
 「お願い。このスマホの“きなこ”の履歴を追って。おそらく、何かしらヒントになるものがあると思う。」
 「分かった。」
 相沢さんは、自前のノートパソコンに、スマホを繋ぎ、操作し始めた。
 「“きなこ”って、確か、あの猫のAIですよね?それを調べて、何になるんですか?」
 私のその問いに、柏木さんはこう答えた。
 「確かに“きなこ”は三毛猫の姿を模した、アバター型のAIです。基本的には、しゃべることはないですが、命令や指示を出せば、それに従ってくれる…。ここまでは誰のスマホにも入っている、AIアシスタントとは変わりありないです。
 だけど、唯一違うのは、このきなこは、ソウさんが作ったということと、あたしたち、それぞれのメンバーのいいパートナとなりえる、アシスタント能力を秘めています。もし、いまだに、このスマホと連携されている、リンさんのスマートウォッチが生きているのなら、そこからきなこは、私たちに、何かしらの、メッセージを送ってきている筈です。」
 柏木さんがそう言い終わるころには、相沢さんの指先が止まった。
 「柏木、ビンゴだ。このスマホは、“敢えて”置いて行かれたらしい。」
 彼はそういうと、ノートパソコンのモニターを見せてきた。
 そこには、メモのような文が映し出されていた。
 『班長。すみません、捕まってしまいました。今は薄暗い、コンクリート壁で覆われた部屋に監禁されています。
 窓はありますが、おそらく地下でしょう…。
 私を監視している人物はおそらくリューさんやアッキーよりも、強い可能性があります…。助けに来てほしいですが、万全の状態で来てください…。』
 と綴られていた。
 「どうやら捕まってしまったみたいですね…。どうします?アマキちゃん?」
 柏木さんのその言葉に、天木さんが、口を開いた。
 「当然、このホテルの地下をアッキー、タケ、リョータの三人をメインに捜査を開始。クドーは刑事を何人か選抜して、彼らに同行させて。
 ソウ君は、ここできなこの動きを追って。」
 私たちは、返事をし、それぞれ動きだした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

泉田高校放課後事件禄

野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。 田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

処理中です...