探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIV:追跡調査

#13

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 日下部さんが、パソコンを操作してから、およそ10分が経った。勿論、他の刑事たちが、リンさんの捜索を行ってはいるが、これと言った目ぼしい報告は、一向に上がってくる気配がない…。
 相沢さんが心配するなとは言っていたが、職業柄、そう言うわけには行かない…。
 流石の天木さんも、ソワソワしており、同じところを行ったり来たりしている。
 それとは別で、柏木さんと亮太さんが必死でリンさんのスマホを解析している…。情けないことに、この捜査の主体は、警察ではなく、ホームズの彼等なのだ…。
 私たち警察は、確かに捜査能力でいえば、彼等よりは上だろう…。だが、余計な令状や許可などを無視して、自分たちのやりたい様に捜査出来るのが、彼等の強みだ…。
 ましてや、一個人の能力が高いメンバーが揃っている…。幾ら我々警察が悔いろうとも、現状こういう状況に慣れているのは、彼等の方だろう…。
 ここは、幾ら歯痒くても、彼等の答えを待つしかない…。
 「…出た…。」
 日下部さんのその言葉に、周りに居た警察とホームズのメンバーたちが反応した。
 「待ってました!」
 天木さんが、我先にモニターを覗き込んだ。
 「クドー!今すぐ、前科調べて!」
 アマキさんがそう言うと、近くにあったプリンターから画像が何枚か印刷されて出てきた。画像には、サングラスをかけた男性が一人映し出されていた。
 「この人は?」
 「それを調べて。名前も身分も、分らない…。警察なら、画像から探すのは得意でしょ?」
 それならホームズの彼等より、警察の方が得意だ…。
 「了解。皆、今すぐこの男顔、交通課のデータと照合して!
 外に居る一課はそこから犯人の自宅に向かって!中に居る皆は、調査続行!」
 一課に入って、他の刑事たちにこうやって指示を出したのは、初めてかもしれない…。三課に居た頃は、ここまで緊迫した状況は今まで、経験したことが無い…。
 人の命が掛かっている…。そう考えると、ジッとなんてしては居られない…。
 「…い、今すぐ交通課のデータと照合します!」
 刀根刑事が、そう言うと、自分のパソコンの前に座った。
 「私も、持ち場に戻る…。何かあれば、報告するし、してくれ…。ここに居る、役立たずな先輩たちより、指示に従う価値はありそうだ…。」
 穂積巡査部長がそういた。
 「何だと!」
 その言葉に、他の男性刑事たちが、怒りの声を上げた。
 「任せますよ、穂積刑事…。私も貴女になら、任せられます…。現場の指揮は貴女主体でお願いします。」
 「心得た…。」
 彼女はそう言うと、部屋を出て行った。
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