探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIV:追跡調査

#12

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 相沢さんが持ってきた機器は、10分程で組み立てられた。モニターが27インチのモニターが16台接続され、まるで、パラボラアンテナの様に、設置されていた。それでも足りなく、私たち警察の物も、幾つか組み込まれ、部屋の半分の体積を占めてしまった。
 「荘厳ですね…。」
 刀根刑事がそう呟いた…。
 「エアコン、最低温度にしておいてくれ。」
 日下部さんがそう言うと、モニターの中央に座り、キーボードとマウスを触った。その次の瞬間、機器は大きな唸りを上げ、ゆっくりと起動し始めた。
 そして、窓も扉も開けていないこの密閉された部屋に、風が生まれた。
 モニター達は煌々と光り、中央の日下部さんを照らした。
 「これから、何が始まるんですか…?」
 私はたまたま近くに居た、亮太さんに訊ねた。
 「リューさんの異名、知ってますか?」
 「確か、千里眼…でしたっけ?」
 「その通りです。リューさんは、監視カメラの映像や画像から、対象の断片的な情報を繋ぎ合わせて、今どこにいるのかを割り出せるんです。
 ただ、大量のモニターを必要とするから、事務所以外では滅多にやらないんですが…。」
 天木さんは人間の行動的な動作から、プロファイリングし、他人の行動を予測することが出来るらしい。
 人の居る位置や、行動範囲を割り出すなら、彼女だけでも出来るのだろう…。ただ、日下部さんにそれを任せたという事は、恐らく彼の方が、割り出しの確率が高いのだろう…。
 「ちなみに、日下部さんのその割り出しの成功確率は、一体幾らですか?」
 「…現状、100パーセントですよ。ウチで一番、説得力のある情報ですよ…。」
 「100パーセント?外れていないって事ですか?」
 「はい。ただそれはあくまで、答えが出た分だけでいえば、です。
 とにかく、リューさんを信じましょう。」
 日下部さんは、黙々とキーボードやマウスを動かし、至ると所にあるモニター達に目をやっていた。


 喫煙ルーム自体はあるらしいが、近場にはなく、ホテルスタッフに案内して貰った、外階段の踊り場で煙草に火を点けた
 「本当に珍しいわね。アンタが警察に協力的なのも、他人前で煙草を吸うのも…。」
 「…。」
 彼は私の言葉には何も答えず、手すりに寄り掛かり、都会の景色を眺めていた。
 私も、無視されては何も話すことが無くなり、階段に腰を下ろした。
 真夏とは言え、それなりに風があり、ホテル自体の日陰にもなっている為、熱い程ではない。
 「天気良いね…。雲一つもない…。」
 「…あぁ…あの日とはまるで真逆だな…。」
 相沢はそう言うと、煙草の灰を灰皿に落とした。
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