探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
243 / 281
ファイルXIV:追跡調査

#10

しおりを挟む
 画像にはリンさんがホテルの裏通路を歩いている姿が映し出された。
 「ソウさん!これの少し前の画像とかって、有る?」
 アマキさんが、モニターを引っ掴み、そう叫んだ。
 『あぁ、そう言うと思って、集めてはみたが、どれも顔までは写っていない…。見事に、このホテルの死角を熟知してやがる…。今全力できなこに追跡させてるが、あまり期待できなさそうだ…。』
 「だが、体系や歩行の癖は分かりそうだな…。アマキさん、久々にやってみるか?」
 日下部さんが珍しく、指の関節を鳴らした。
 「…でも、機材は全部、事務所に置いてきてる…。」
 アマキさんが、否定する様にそう言った。
 「警察のものを借りるしかない…。ここにある物全部かき集めれば、何とかなると思う…。」
 「かき集めるって、何をするんですか?」
 私は、二人に訊ねた。もし、警察の機器を使おうとしているのなら、それは頂けない。
 「警察のネットワークは使わない。使うのはモニターくらいだ…。」
 「モニターくらいなら…。」
 “良いか”そう言いかけたときだった。
 扉が開いた。
 「そんなガラクタより、もっとイイモノを使え。」
 扉を押し開ける様に現れたのは、今まで、イヤホン越しに、声しか聞こえてこなかった相沢さんだった。
 「俺の機材一式全て貸してやる。やれるだけやれ。」
 更に、段ボール箱がいくつも詰まれた台車が5台ほど後に続いていた。その1台を押していたのが、真紀さんだった…。
 「ちょ、ちょっと…。普通、女性に荷物持ちを任せる?」
 「良いじゃねぇか、暇だったんだろ?」
 「暇じゃないわよ!ガスボンベ車に積んでただけでしょ!」
 真紀さんは、激怒した。
 「俺には暇そうに見えたんだがな…。まぁ良い。竜、秋山、岡本。設置してくれ。そこらにあるガラクタより、1万倍マシだからな。」
 相沢さんが嘲笑う様にそう言った。
 「アンタねぇ…。さっきから、ガラクタ、ガラクタって、ここに在るマシンは、かなりのスペックを誇るんですよ!」
 この中で、一番大きなデスクトップ型のパソコンの前に座っていた女性刑事が声を荒げた。彼女は、刀根榛香。今現場に居る刑事一のオタクだ…。それも、趣味が“自作PC”という、かなりマニアックな部類の…。現に今、彼女の前に置かれているパソコンは、彼女がパーツから選んで、作成させたものだ。それを“ガラクタ”呼ばわりされては、堪った物じゃないだろう…。
 「アンタの機材がどんなものか知らないけどね!私の子をバカにされるのは、絶対に許せない!」
 そう言いながら、刀根刑事は、ツカツカと相沢さんに詰め寄った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夕立ち〈改正版〉

深夜ラジオ
現代文学
「手だけ握らせて。それ以上は絶対にしないって約束するから。」  誰とも顔を合わせたくない、だけど一人で家にいるのは辛いという人たちが集まる夜だけ営業の喫茶店。年の差、境遇が全く違う在日コリアン男性との束の間の身を焦がす恋愛と40代という苦悩と葛藤を描く人生ストーリー。   ※スマートフォンでも読みやすいように改正しました。

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

なぜあの人はブルマ姿で0.9マイルも全力ダッシュするのか?

雨墨篤
ミステリー
どうしてあの人は、今どきブルマ姿なんかで街中を走っているのだろう? そんなささやかな謎を解き明かす、日常の謎系ミステリー。 随分と昔に書いた「九マイルは遠すぎる」オマージュ作品です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

処理中です...