239 / 281
ファイルXIV:追跡調査
#6
しおりを挟む
エレベーターが3階に到着し、私たちは廊下に出た。
事件が起きているとはいえ、一部のスタッフを除いては、警察と私たちくらいしか、居ない。そのため、従業員通用口は静かだ…。だが、一角からは、何やら騒がしい声が響いている…。その騒がしい声の中に、聞き馴染みのある声が、幾つかあった。
私たち3人は、その一角にあった広めの部屋の扉を開けた。
「ドタバタしてるね。通信ができないんじゃぁ、無理も無いか…。」
私の声に、全員がこちらの方を見た。
「アマキさん…。すみません…。まさかこんなに早く、呼び出すことになるとは…。」
アミが申し訳なさそうに、そう頭を下げた。
「仕方ないよ。ここまでは私も想定できなかったからね…。取り敢えず、通信の復旧からやろうか。ミカちゃんとタケ、よろしく。」
「はーい。」「了解。」
二人はそう言うと、それぞれ、持って来ていた機器などを準備し始めた。
「天木さん。」
クドーが私の名前を呼んだ。
「大丈夫。直復旧できると思うから。」
「そうじゃなくて、何で今のタイミング何ですか?もっと早く来てくれれば、もう少し早めに状況が進んだんじゃないんですか?」
珍しく、苛ついている様だった。それはそうか…。朝早く人質立籠事件に当たった後、こんな大きな事案に参加している。朝から緊張が張り詰めっぱなしで、相当精神が衰弱しているのだろう…。
だから、この空間に、丁度彼女が居てくれて、良かった。
「工藤さん。」
ミドリンが、クドーに声を掛けた。
「天木ちゃんが、最初から現場に入っていなかったのは、当然、理由があります。
一つは、班長、副班長クラスの人材が、全員揃っていないから。」
「揃っていないならなおさらじゃないですか?」
クドーも食って掛かった。
「揃ってないなら、誰かが誰かを補わなければならないのが、普通じゃないんですか?」
ミドリンがそれに答えた。
「その普通が、私たちには通じないんですよ。工藤さん。
私たちは、特別な技術や能力を持った謂わば、烏合の衆…。誰も真似や、補助が出来ないの。他人によっては、模倣や疑似的な事は出来るかもしれませんが、出来た所で…。っていう所です。こんな、大きな事件に対して、手薄な状況で対応する程、私たち“ホームズ”は強くないんですよ…。
だから、捜査も慎重に成らざるを得ない…。もう…誰も失いたくないですし…。
次に二つ目の理由としては、もしもの時の為に、最小構成のチームを残して置きたかったから。
天木ちゃん、美歌ちゃん、タケ君の3人は、“ホームズ”の土屋班を除く、3班を平均的に補える最小構成…。今の様な状況下では、必ず欲しくなる、オールラウンダーなチーム。このチームは、何が何でも、取っておきたいですから…。」
「じゃ、じゃぁ、その3人を同じチームとしてしまえば…。」
更にクドーが、食い下がる…。他の刑事さんの何人かも、「確かに…。」と頷いた。
だが、それを論破するように、ミドリンが続けた。
「同じチームにしたとしても、誰かが居なくなる可能性は、ゼロじゃないですよね?だから、この3人は隔離したの。」
「この3人はって、他のチームやメンバーは、どうでも良いってことですか?」
「……その言い方は語弊がありましたね…。正確には、その3人以外のチームには、予め“同じ目的を達せよ”と指示を出しています。」
「同じ、目的?」
「傍聴を警戒して、内容は口には、出さないけど皆、多分知ってると思う…。ほら、来ました。」
その言葉の後に、入り口の扉が開いた。
「柏木、浅野、戻りました。」
そこには、柏木さんが立っていた。
事件が起きているとはいえ、一部のスタッフを除いては、警察と私たちくらいしか、居ない。そのため、従業員通用口は静かだ…。だが、一角からは、何やら騒がしい声が響いている…。その騒がしい声の中に、聞き馴染みのある声が、幾つかあった。
私たち3人は、その一角にあった広めの部屋の扉を開けた。
「ドタバタしてるね。通信ができないんじゃぁ、無理も無いか…。」
私の声に、全員がこちらの方を見た。
「アマキさん…。すみません…。まさかこんなに早く、呼び出すことになるとは…。」
アミが申し訳なさそうに、そう頭を下げた。
「仕方ないよ。ここまでは私も想定できなかったからね…。取り敢えず、通信の復旧からやろうか。ミカちゃんとタケ、よろしく。」
「はーい。」「了解。」
二人はそう言うと、それぞれ、持って来ていた機器などを準備し始めた。
「天木さん。」
クドーが私の名前を呼んだ。
「大丈夫。直復旧できると思うから。」
「そうじゃなくて、何で今のタイミング何ですか?もっと早く来てくれれば、もう少し早めに状況が進んだんじゃないんですか?」
珍しく、苛ついている様だった。それはそうか…。朝早く人質立籠事件に当たった後、こんな大きな事案に参加している。朝から緊張が張り詰めっぱなしで、相当精神が衰弱しているのだろう…。
だから、この空間に、丁度彼女が居てくれて、良かった。
「工藤さん。」
ミドリンが、クドーに声を掛けた。
「天木ちゃんが、最初から現場に入っていなかったのは、当然、理由があります。
一つは、班長、副班長クラスの人材が、全員揃っていないから。」
「揃っていないならなおさらじゃないですか?」
クドーも食って掛かった。
「揃ってないなら、誰かが誰かを補わなければならないのが、普通じゃないんですか?」
ミドリンがそれに答えた。
「その普通が、私たちには通じないんですよ。工藤さん。
私たちは、特別な技術や能力を持った謂わば、烏合の衆…。誰も真似や、補助が出来ないの。他人によっては、模倣や疑似的な事は出来るかもしれませんが、出来た所で…。っていう所です。こんな、大きな事件に対して、手薄な状況で対応する程、私たち“ホームズ”は強くないんですよ…。
だから、捜査も慎重に成らざるを得ない…。もう…誰も失いたくないですし…。
次に二つ目の理由としては、もしもの時の為に、最小構成のチームを残して置きたかったから。
天木ちゃん、美歌ちゃん、タケ君の3人は、“ホームズ”の土屋班を除く、3班を平均的に補える最小構成…。今の様な状況下では、必ず欲しくなる、オールラウンダーなチーム。このチームは、何が何でも、取っておきたいですから…。」
「じゃ、じゃぁ、その3人を同じチームとしてしまえば…。」
更にクドーが、食い下がる…。他の刑事さんの何人かも、「確かに…。」と頷いた。
だが、それを論破するように、ミドリンが続けた。
「同じチームにしたとしても、誰かが居なくなる可能性は、ゼロじゃないですよね?だから、この3人は隔離したの。」
「この3人はって、他のチームやメンバーは、どうでも良いってことですか?」
「……その言い方は語弊がありましたね…。正確には、その3人以外のチームには、予め“同じ目的を達せよ”と指示を出しています。」
「同じ、目的?」
「傍聴を警戒して、内容は口には、出さないけど皆、多分知ってると思う…。ほら、来ました。」
その言葉の後に、入り口の扉が開いた。
「柏木、浅野、戻りました。」
そこには、柏木さんが立っていた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる