探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIV:追跡調査

#4

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 「何が、起きてるの…。」
 今まで、資料を読み込ませていたAIの“きなこ”が侵入していた筈のカメラが、急に動作しなくなってしまった。それだけでなく、近くにあったパソコンや他通信機器、天井の蛍光灯や、館内放送用のスピーカーからもノイズが走り始めた…。
 「始まっちゃったか…。」
 京子さんが、そう言い、ポケットからスマホを取り出した。
 「アマキさん、聞こえますか?」
 どうやら通信を試みている様だが、応答は、ノイズだらけで、聞こえたものではない…。
 「始まったって、何が始まったんですか?」
 私の問いに答えたのは、実採さんだった。
 「リンさん、スライダー体質なんです…。」
 「スライ…え?」
 「スライダー体質。別名、電気特異体質。医学的にもちゃんとした明記があるわけではないですが、体内に電気が溜まりやすい体質者の事をそう言ったりします。まぁ、簡単に言えば、静電気と大して変わらないのですが、その電流値は他人の倍にもなるとも言われて、近くに居るだけで、電化製品の殆どに、何かしら影響を与えてしまうこともあります。」
 静電気…。私のイメージするのは、冬に時期にドアノブなどに触ると、ビリっと来るあれだ…。そんな小さな電気が、電化製品に影響を及ぼすとは、到底思えない…。
 「良くありません?特定の人物に電話を掛けると、良く聞こえにくい時があったり、家電や、スマホが壊れる頻度が高い人とか…。
 人は、知らず知らずのうちに体内に電気を蓄え、それを何らかの形で放出してしまう。それが一般的に言う、静電気です。
 ですが、スライダー体質の人は、感情や体調の変化によって、放出される電流量が著しく変化するそうです…。」
 更に、京子さんが追記する様に話始めた。
 「リンさんの場合は、放出する電流量が、人知を超えています…。今もこうやって、大規模で通信障害を引き起こすレベルで…。」
 そんな力、本来なら信じ難いのだが、ホームズには、土屋さんのエンパスや実採さんの読心術、京子さんの俯瞰、秋山さんの無痛等、様々な体質や特技を兼ね備えた人が居る…。今更信用するなという方が、難しいかもしれない…。
 だが、通信が遮断された状態というのは変わらない…。これでは、潜入組との連携も取れなくなってしまった…。
 「相沢さんは…相沢さんなら何とか出来るんじゃないんですか?」
 「それは無理ね…。ソウ君は、通信の環境を作ることはできても、物理的にダメになった機器を遠隔で復旧することはできない…。現に、彼との通信も、“きなこ”も居なくなってる…。」
 私の一途な望みは早々に、打ち砕かれてしまった…。
 「でも、一つだけ、確かでいい知らせはあります。」
 「え?」
 京子さんが更に続けた。
 「これだけ大規模な電気不良が起きてるんです、リンさんは無事ですよ…。」
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