探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIV:追跡調査

#3

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 火薬の臭いだ…。微かにだが、確実に彼の方から火薬の臭いが漂ってきた。上手く煙草の臭いで誤魔化してはいるが、私の鼻は誤魔化せない。
 怪しい…。と思えば疑うのが警察だが、私たち探偵は、調査するところからスタートする。私はイヤホンマイクで柏木班長に報告を入れ、彼の行動を調査することにした…。
 だが、そのイヤホンマイクは、先ほどリンクを切っていた為、その報告は、誰にも伝わって居なかった…。

 「あれ?穂積さん一人で戻って来たんですか?」
 厨房に入ろうとしたとき、独りの男性に声を掛けられた。確か、ホームズの代表、宮間修二。
 「あぁ、リンさんならまだ休憩室に居るよ。私は水分だけ取れればそれで良いからな。」
 「そう…それならいいんだけど…。そういうと、彼はスマホを取り出した。
 「リンさん、さっきから通信切っているみたいなんだ。またいつものかと思って、ミカちゃん経由でさっきから呼びかけているんですが…。」
 「だったら呼んできましょうか?」
 「お願いして良いかな?少し、嫌な予感もするんで…。」
 
 私は、来た道を戻り、休憩室に向かった。宮間さんが言っていた“いつもの”とは、よく分からないが、通信ができないというのは、私たちにとっても、彼らにとっても、致命的だ…。
 休憩室に入ると、彼女の姿はなかった。あったのは、テーブルの上に置かれた赤いスマホただ一つだけだった。
 スマホの画面には、“ミカ”という名前から、何度かメッセージを送っていた…。
 「あの、ここに居た女性知りませんか?」
 私は近くにいた男性従業員に問いただした。
 「あ、あぁ、確かさっき出て行ったと思ったけどなぁ…。」
 「どっちに行ったか分かりますか?」
 「さぁ、そこまでは見てなかったけど…。」
 お手洗いだけなら良いのだが、大事なスマホを置いていくか…。それほど切羽詰まっていたのか…。いや、先ほどの様子では、そんなことは恐らくないだろう…。だとしたら、緊急を要する事態に陥ったか…。それに男性従業員の話を組み合わせると…。
 「何かを発見した…。」
 私は、服の襟についたマイクを取り、現場にいる警察全員に向けて、報告した。
 「ホームズの女性スタッフ、大野鈴夏が行方を暗ましました。もし見かけた場合、報告下さい。」
 『え?リンさん、居なくなったんですか?』
 真っ先にそう返してきたのは、工藤刑事だった。
 「えぇ、スマホだけを置いて…。」
 その時だった、休憩室にあった蛍光灯が何本か、チカチカと点滅し始めた。
 それとほぼ同時に、自販機に小銭を入れていた女性従業員が声を上げた。
 「ちょっと!お金飲まれたんだけど!」
 それだけじゃない…。インカムの向こうからも、何かざわつく声が聞こえてくる…。
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