探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIV:追跡調査

#2

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 「これだから“組織”ってのは、嫌いなんだよ…。」
 「警察なのに、警察が嫌いなのは、意外ですね…。」
 私がそう言うと、穂積刑事は首を横に振った。
 「私が嫌いなのは警察組織そのもの。警察の正義は嫌いじゃない。」
 穂積刑事の事は、実際のところ、よく分からない。知り合ったのはつい数時間前だ。だが、私たちホームズのメンバーや、工藤刑事と同じ匂いがする。
 「あの、穂積さん。クドーさんの事って知っています?」
 「工藤って、最近一課に配属された、アヤヤの事か?」
 アヤヤ?
 「え、えぇ。工藤綾音さんの事です。」
 「…済まないが、詳しくは知らんのだ。だが、私と同じ匂いがするのは確かだ…。まるで、“正義”そのものを敬愛している様なそんな感じがする。それも、私とはまた別次元の“正義”を…。」
 彼女は650ミリリットルある麦茶を飲み干し、近くのごみ箱に放った。
 「すまんな、あまり仲間の事を口走る事はできないのだが、アヤヤの事は本当に知らないんだ…。あの娘、キャリア出身なのに、エリートコースからは外れて、警視庁直属の三課に所属していて、巡査からスタートなんて、珍しいにも程がある…。
 そんな珍しい人なら、何らかの情報や噂が出回っていても可笑しくないんだが、あの娘の場合、異端中の異端で、何の情報も無いらしい…。前に、私の知り合いの鑑識が、色々探りを入れてくれたんだが、成績も態度も、平均値だったらしい…。」
 警察のキャリアについては、良くは知らないが、出世コースは約束されるらしい…。
 だが、彼女の話を総合すれば、工藤刑事には、その約束が無かったらしい…。
 しかも、警察側から見ても、工藤刑事の存在は、異端らしい…。
 「私は、もう戻るが貴女はもう少し休んでいて…。」
 「あの…。」
 「警察は、こういう時こそ、タフなんですよ。」
 穂積刑事はそう言うと、休憩スペースを出て行った。
 私が最後に訊ねたかったのは、そうではないのだが、行ってしまった以上、声を掛けずらい…。何たって、この休憩スペースには、何人かの普通の従業員が混じっているからだ…。ここで、大きい声で、何かを訊ねる等は、最新の注意を払わないといけない。
 彼女も、それが分っているからなのか、そう答えたのか…。
 私もこのジュースを飲み干し、ごみ箱に捨てたときだった。何か香ばしい匂いが漂ってきた。
 私は思わず振り返ると、男性スタッフが、休憩が終わったのか廊下に出て行った…。だが、その匂い、一般人なら嗅ぐ機会なんてあまりないのだろうが、私なら、それの正体がわかる…。
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