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ファイルXIV:追跡調査
#1
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「大野さん!少し落ち着いてきたから、休憩入って良いよ!」
料理長にそう声を掛けられた。
「はい!ここの食器洗い終わったら休憩入らせてもらいます!」
忙しかった厨房はある程度ひと段落し、私は休憩に入った。
潜入捜査というのは久々だが、ここまで本格的に変装しての、捜査はある意味初めてかもしれない。
ザキさんに連れられ、ホームズに入社した時はただの事務員の様な位置づけだったのだが、私が物理学に精通すると知ると、それを活かした仕事を任される機会が多くなり、今では、特殊調査班の副班長を任されるまでになった。探偵事務所に所属するとは、昔の自分なら考えられなかっただろう…。
何とも感慨深いと思いながら、休憩スペースの椅子に腰を下ろし、自販機で買ったリンゴジュースを飲み、久々にイヤホンの方に耳を傾けた。
どうやら、工藤刑事とアミちゃんたちが、せっせと捜査を進めている様だった。それを聞き、出番はまだ来そうに無いと思い、ミカちゃんに、何か振られたら通知鳴らして欲しいとメッセージを送り机に伏せた。
料理は得意で好きなのだが、流石に一主婦の私には疲れる…。同じく厨房で、毒が盛られたりしてないかに目を光らせている宮間さんは、元々料理人という事もあり、こういう環境、現場にはある程度慣れているのだろうか、朝からぶっ通しで厨房に立ち続けている…。
「…流石、よくやりますね…。こういう事、やっぱり慣れてるんですか?」
その声に驚き、思わず振り返った。声の主は、私と同じユニホームを着た、ポニーテールの女性だ。名前は確か、穂積詩帆。警視庁捜査一課の巡査部長。彼女も、私たちホームズ同様、潜入捜査を任されている…。まぁ、彼女だけでなく、他にもスタッフや客に扮した刑事さんたちは山ほど居るが、彼女は警察関係者では珍しく、私たちを邪険に扱わない、善き理解者でもあった。
「まぁ、こういう仕事は慣れてますから…。」
「そう…。それより、結構、可愛らしいも飲むのね…。」
私の手元を見るなり、そう言った。
「好きなんですよ…。何か問題でも?」
「いいえ…。」
穂積刑事はそう言うと、自販機から、麦茶を購入すると、私の隣に座り喉を鳴らしながら、飲み始めた。
「何か見つかりそうですか?」
私がそう訊ねると、彼女は首を横に振った。
「まだ何も…。まったく、いつもなら、イタズラで片付けるのに、政治家が絡むと言い訳が面倒だからって、こうやって人力を尽くすんだよね…。一般人からすれば、堪ったもんじゃないよね。」
彼女はまた勢いよく、麦茶を飲んだ。
料理長にそう声を掛けられた。
「はい!ここの食器洗い終わったら休憩入らせてもらいます!」
忙しかった厨房はある程度ひと段落し、私は休憩に入った。
潜入捜査というのは久々だが、ここまで本格的に変装しての、捜査はある意味初めてかもしれない。
ザキさんに連れられ、ホームズに入社した時はただの事務員の様な位置づけだったのだが、私が物理学に精通すると知ると、それを活かした仕事を任される機会が多くなり、今では、特殊調査班の副班長を任されるまでになった。探偵事務所に所属するとは、昔の自分なら考えられなかっただろう…。
何とも感慨深いと思いながら、休憩スペースの椅子に腰を下ろし、自販機で買ったリンゴジュースを飲み、久々にイヤホンの方に耳を傾けた。
どうやら、工藤刑事とアミちゃんたちが、せっせと捜査を進めている様だった。それを聞き、出番はまだ来そうに無いと思い、ミカちゃんに、何か振られたら通知鳴らして欲しいとメッセージを送り机に伏せた。
料理は得意で好きなのだが、流石に一主婦の私には疲れる…。同じく厨房で、毒が盛られたりしてないかに目を光らせている宮間さんは、元々料理人という事もあり、こういう環境、現場にはある程度慣れているのだろうか、朝からぶっ通しで厨房に立ち続けている…。
「…流石、よくやりますね…。こういう事、やっぱり慣れてるんですか?」
その声に驚き、思わず振り返った。声の主は、私と同じユニホームを着た、ポニーテールの女性だ。名前は確か、穂積詩帆。警視庁捜査一課の巡査部長。彼女も、私たちホームズ同様、潜入捜査を任されている…。まぁ、彼女だけでなく、他にもスタッフや客に扮した刑事さんたちは山ほど居るが、彼女は警察関係者では珍しく、私たちを邪険に扱わない、善き理解者でもあった。
「まぁ、こういう仕事は慣れてますから…。」
「そう…。それより、結構、可愛らしいも飲むのね…。」
私の手元を見るなり、そう言った。
「好きなんですよ…。何か問題でも?」
「いいえ…。」
穂積刑事はそう言うと、自販機から、麦茶を購入すると、私の隣に座り喉を鳴らしながら、飲み始めた。
「何か見つかりそうですか?」
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「まだ何も…。まったく、いつもなら、イタズラで片付けるのに、政治家が絡むと言い訳が面倒だからって、こうやって人力を尽くすんだよね…。一般人からすれば、堪ったもんじゃないよね。」
彼女はまた勢いよく、麦茶を飲んだ。
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