232 / 281
ファイルXIII:総力戦
#18
しおりを挟む
AIというのは素晴らしい物だ。扱い方さえしっかりと知っていれば、善にも悪にもなりうるだろう…。そんなAI…。もとい、『きなこ』は相沢達樹が0から作り上げた。姿形はそもそも無い筈なのだが、私が彼と知り合った時には既に、きなこは、“三毛猫”の姿だった。何をモデルにしたのか、何故猫で、『きなこ』なのかは全く分からないが、“きなこ”というAIは私たちの任務のサポートから、調査や時には事務仕事など、様々な場面で助けてくれる、いわば、ウチの万事屋に近い。
そんな万能屋さんが、今はカメラを目にし、そこに映し出される画像を“データ”として処理して、集計してくれている。そこから、犯人像をアマキ班が主体で絞り出していく。何とも、何とも理にかなった動きだろうか。
そんな中、私が出来る事はと言えば、件の“きなこ”と相沢が暴走しない様に見張るだけ…。地味かもしれないが、かなり大変な任務だったりする。犯人を捜し出すより、大変かもしれない…。AIというのは、加減を知らない…。私が幾ら全力を出したとしても、制御できるかなんて、分らない…。増してや、あの相沢が作ったAI。いくつもの隠し玉を持っていても、不思議ではない。
それに引き換え、“きなこ”は私たちが身に着けている、スマホやスマートウォッチなどのサポートにも入れられている為、私が失敗すれば、ホームズのシステムに、大ダメージを受けることは、間違いない…。
だから、片時もモニターから目を離すわけには行かなかった…。
「それにしても、ソウ君、どうやってホテルのネットワークに忍び込ませたの?」
その様子を見ていた天木さんが、相沢にそう訊ねた。
『…天木、“シュレーディンガーの猫”って、知っているか?』
シュレーディンガーの猫。確か、50%の確率で死んでしまう箱の中に猫を入れ、1時間後に箱を開ける。その時に、箱を開けるまで、箱の中では、理論上、“生きている猫”と“既に死んでしまった猫”の本来合わさる事のない二つの事象が同時に起きているという矛盾を説明するための架空実験の事だ。
「知ってるよそのくらい。それと、何の関係があるの?」
『きなこは、何処にでもいて何処にもいない。そんな物だと、思ってくれ。猫と同じ様に、神出鬼没で気まぐれで…。俺が作っていうのもなんだが、掴めない奴だよ、きなこってのは…。』
その声は、少し懐かしむ様な声だった…。
『ってのは冗談で、ただ単に、日下部に頼んで、ホテルのどこでもいいウォールジャックに通信用のデバイスを挿してもらっただけだ。』
そんな万能屋さんが、今はカメラを目にし、そこに映し出される画像を“データ”として処理して、集計してくれている。そこから、犯人像をアマキ班が主体で絞り出していく。何とも、何とも理にかなった動きだろうか。
そんな中、私が出来る事はと言えば、件の“きなこ”と相沢が暴走しない様に見張るだけ…。地味かもしれないが、かなり大変な任務だったりする。犯人を捜し出すより、大変かもしれない…。AIというのは、加減を知らない…。私が幾ら全力を出したとしても、制御できるかなんて、分らない…。増してや、あの相沢が作ったAI。いくつもの隠し玉を持っていても、不思議ではない。
それに引き換え、“きなこ”は私たちが身に着けている、スマホやスマートウォッチなどのサポートにも入れられている為、私が失敗すれば、ホームズのシステムに、大ダメージを受けることは、間違いない…。
だから、片時もモニターから目を離すわけには行かなかった…。
「それにしても、ソウ君、どうやってホテルのネットワークに忍び込ませたの?」
その様子を見ていた天木さんが、相沢にそう訊ねた。
『…天木、“シュレーディンガーの猫”って、知っているか?』
シュレーディンガーの猫。確か、50%の確率で死んでしまう箱の中に猫を入れ、1時間後に箱を開ける。その時に、箱を開けるまで、箱の中では、理論上、“生きている猫”と“既に死んでしまった猫”の本来合わさる事のない二つの事象が同時に起きているという矛盾を説明するための架空実験の事だ。
「知ってるよそのくらい。それと、何の関係があるの?」
『きなこは、何処にでもいて何処にもいない。そんな物だと、思ってくれ。猫と同じ様に、神出鬼没で気まぐれで…。俺が作っていうのもなんだが、掴めない奴だよ、きなこってのは…。』
その声は、少し懐かしむ様な声だった…。
『ってのは冗談で、ただ単に、日下部に頼んで、ホテルのどこでもいいウォールジャックに通信用のデバイスを挿してもらっただけだ。』
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

失せ物探し・一ノ瀬至遠のカノウ性~謎解きアイテムはインスタント付喪神~
わいとえぬ
ミステリー
「君の声を聴かせて」――異能の失せ物探しが、今日も依頼人たちの謎を解く。依頼された失せ物も、本人すら意識していない隠された謎も全部、全部。
カノウコウコは焦っていた。推しの動画配信者のファングッズ購入に必要なパスワードが分からないからだ。落ち着ける場所としてお気に入りのカフェへ向かうも、そこは一ノ瀬相談事務所という場所に様変わりしていた。
カノウは、そこで失せ物探しを営む白髪の美青年・一ノ瀬至遠(いちのせ・しおん)と出会う。至遠は無機物の意識を励起し、インスタント付喪神とすることで無機物たちの声を聴く異能を持つという。カノウは半信半疑ながらも、その場でスマートフォンに至遠の異能をかけてもらいパスワードを解いてもらう。が、至遠たちは一年ほど前から付喪神たちが謎を仕掛けてくる現象に悩まされており、依頼が謎解き形式となっていた。カノウはサポートの百目鬼悠玄(どうめき・ゆうげん)すすめのもと、至遠の助手となる流れになり……?
どんでん返し、あります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる