探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIII:総力戦

#16

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 それから暫くすると、前園警部から、“捜査令状が降りた”と一報が入り、私たちはその令状を元に、ホテルから、従業員名簿と履歴書等を全て、押収した。
 それらを、現場本部がある部屋に運び込み、スマホのカメラや、複合機のスキャン機能を使い、只管、資料のデータを相沢さんに送った。警察10人程いるとは言え、流石に、この量は、時間が掛かる…。
 「前園さん、もっと人数増やせませんか?」
 『もう2~3人程度なら割けるが、一般刑事とは違って、警察庁の刑事だからな…。あまりいい顔できないんだよ…。』
 珍しく、力なくそう言った。
 「取り敢えず、人数が欲しいので、2~3人でも下さい。」
 私は、そう言い電話を切った。
 「やっぱり、そんなに割けないって?」
 「はい…。今動いている刑事の大半は、警察庁の人間だから、前園さんの力ではどうにも…。」
 「そこまで、警察って確執があるものなんだね…。」
 京子さんはそう言うと、自前のノート型のパソコンのキーボードをパチパチと叩いた。
 「データ読み込んだら、一瞬なんだけど、下準備が大変なんだよね…。」
 京子さんは、『こればかりは仕方がない』と首を振った。
 まぁ、AIというのが凄いことは、知っているだが、私たち人間と違うのは、データの中で生きるか、自然の世界で生きるかの違いだ…。彼等に頼るには、データとして、それを置き換えなくてはならない。そこの作業が一苦労だ…。
 「もっといい方法無いんですかね…。」
 私がそう呟いた直後、相沢さんの声が、イヤホン越しに聞こえてきた。
 『クドーさんが良いのなら、一番手っ取り早い方法がありますよ。』
 「え?」
 その言葉に反応したのは、私だけでなく、京子さんもだった。
 『そこにある、カメラ、自由に使っていいなら、ウチのきなこを自由に遊ばせられるんだがな…。』
 私と京子さんは、部屋の天井の方を見回した、すると、入り口の扉の上に、防犯カメラの様な、半球体の物体が、着いていた。
 「カメラって、これ?」
 京子さんは、大袈裟に手を振った。
 『そう、それ。それに、資料を移すだけで良い。後はきなこが勝手に見てくれるだろうから。』
 「なるほど…。」
 だが、これは、私たち警察の私物ではなく、このホテルの物。もしこのシステムに侵入し、防犯カメラを乗っ取ったとなったら、大変なことになるだろう。だから、私一人の判断では、頷くことはできない…。
 「流石にそれは、容認できま…。」
 『クドーさん。大丈夫ですよ!ウチのミカちゃんが居るんで、ソウさんを好きに動かしても良いと思うよ。』
 そう、柏木さんが言った。
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