探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
230 / 281
ファイルXIII:総力戦

#16

しおりを挟む
 それから暫くすると、前園警部から、“捜査令状が降りた”と一報が入り、私たちはその令状を元に、ホテルから、従業員名簿と履歴書等を全て、押収した。
 それらを、現場本部がある部屋に運び込み、スマホのカメラや、複合機のスキャン機能を使い、只管、資料のデータを相沢さんに送った。警察10人程いるとは言え、流石に、この量は、時間が掛かる…。
 「前園さん、もっと人数増やせませんか?」
 『もう2~3人程度なら割けるが、一般刑事とは違って、警察庁の刑事だからな…。あまりいい顔できないんだよ…。』
 珍しく、力なくそう言った。
 「取り敢えず、人数が欲しいので、2~3人でも下さい。」
 私は、そう言い電話を切った。
 「やっぱり、そんなに割けないって?」
 「はい…。今動いている刑事の大半は、警察庁の人間だから、前園さんの力ではどうにも…。」
 「そこまで、警察って確執があるものなんだね…。」
 京子さんはそう言うと、自前のノート型のパソコンのキーボードをパチパチと叩いた。
 「データ読み込んだら、一瞬なんだけど、下準備が大変なんだよね…。」
 京子さんは、『こればかりは仕方がない』と首を振った。
 まぁ、AIというのが凄いことは、知っているだが、私たち人間と違うのは、データの中で生きるか、自然の世界で生きるかの違いだ…。彼等に頼るには、データとして、それを置き換えなくてはならない。そこの作業が一苦労だ…。
 「もっといい方法無いんですかね…。」
 私がそう呟いた直後、相沢さんの声が、イヤホン越しに聞こえてきた。
 『クドーさんが良いのなら、一番手っ取り早い方法がありますよ。』
 「え?」
 その言葉に反応したのは、私だけでなく、京子さんもだった。
 『そこにある、カメラ、自由に使っていいなら、ウチのきなこを自由に遊ばせられるんだがな…。』
 私と京子さんは、部屋の天井の方を見回した、すると、入り口の扉の上に、防犯カメラの様な、半球体の物体が、着いていた。
 「カメラって、これ?」
 京子さんは、大袈裟に手を振った。
 『そう、それ。それに、資料を移すだけで良い。後はきなこが勝手に見てくれるだろうから。』
 「なるほど…。」
 だが、これは、私たち警察の私物ではなく、このホテルの物。もしこのシステムに侵入し、防犯カメラを乗っ取ったとなったら、大変なことになるだろう。だから、私一人の判断では、頷くことはできない…。
 「流石にそれは、容認できま…。」
 『クドーさん。大丈夫ですよ!ウチのミカちゃんが居るんで、ソウさんを好きに動かしても良いと思うよ。』
 そう、柏木さんが言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レトロな事件簿

八雲 銀次郎
ミステリー
昼は『珈琲喫茶れとろ』と夜は『洋酒場レトロ』の2つの顔を持つ店で、バイトをする事になった、主人公・香織。 その店で起こる事件を、店主・古川マスターと九条さん等と、挑む。 公開予定時間:毎週火・木曜日朝9:00 本職都合のため、予定が急遽変更されたり、休載する場合もあります。 同時期連載中の『探偵注文所』と世界観を共有しています。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...