探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIII:総力戦

#10

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 「時間がないんです。早急にお願いできますか?」
 京子さんが実採さんの前に、例の段ボール箱を置いた。
 「じゃぁ、30分。」
 彼女はそう言うと、段ボール箱から、適当なファイルを手に取り、ペラペラと、めくり始めた。それも、かなりのスピードで、冊子を捲っていく…。
 そして、教科書の様な厚さの冊子を、捲り終え、次のファイルを手に取った。
 呆気に取られていると、京子さんが、私のスーツの袖を引っ張り、部屋を出るように促した。
 「ここは、ミドリさんに任せて、私たちは、別の事を調べましょう。」
 「実採さんに任せるって…。それに、さっきの言葉。あれって、どういう意味ですか?」
 『読心術』だけで、“裏”ラストホームズと呼ばれているか…。実のところ、違和感を覚えていたわけではない…。
 読心術。他人の表情や、筋力の動きなどを通じて、相手の心の中の動きを読み取る。しかも彼女の制度は、もはや、超能力のそれに近い。
ただ、その点においては、土屋慎介の、エンパスでも、代用は可能。むしろエンパスの方が、他人と対面しなくても、効果を発揮させることができる点でいえば、“探偵業”に向いているのは、エンパスの方だろう。
 だから、実採さんは、相談員として、ホームズに所属している。それだけなら、納得がいく。だが、“裏”ラストホームズといわれるまでのスキルを持っているとは思えない…。
 「ミドリさんの強みは、その記憶力と観察力、それと洞察力です。ミドリさんは、あんな見た目して、ホームズ一、頭脳明晰です。
 知能指数や、知識力では、アマキさんやツチヤさんの方が上です。ですが、頭の良さでいえば、ミドリさんがトップクラスです。
 言ってしまえば、アマキさんとツチヤさんを、足して割ったような人です。」
 天木さんと土屋さんは、確かにホームズのツートップといっても過言ではないほどの、頭脳の持ち主だ。とはいえ、二人とも、頭脳の良さは、別方向のもので、それぞれ長所も短所もある。二人は、それぞれを補って、活動している。
 だが、京子さんの今の言葉が本当なら、実採さん一人で、ホームズそのものを動かせてしまう。それなら、確かにホームズの切り札と呼ばれていても、問題はないはずだ…。
 「それと、もう一つ。ミドリさんは、“速読術”も身に着けているんです。そのスピードは、分速3万文字以上。」
 速読術というのは、昔ネットニュースの記事で読んだことがある。読んで字のごとく、文字を早く読む方法。確か、ギネス記録によれば、分速2.5万文字だったはずだ…。
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