探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルXIII:総力戦

#7

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 彼女が示した場所には、彼女の胸の辺りの高さに、丸い金属の部品が、壁に埋め込まれている。更にそこだけでなく、この部屋の壁、至る所に。
 「これは、おそらく、何かのパイプが通っていた時の名残…。この位置からして、水道管だと予測します。その証拠に、今はケーブル通しに使われていますが、下水管と同じ大きさの穴が、開いています。」
 京子さんは、更に床を指さした。
 「ってことは、ここは、以前は、厨房か何かだったって事ですか?」
 私の問いに、京子さんは頷いた。
 「そう言う事です。この部屋も、その改装プランの中に組み込まれていたとしたら、1か月以内に、絞るのが妥当だと、思われます。
 ですよね?アマキさん?」
 京子さんは、自信たっぷりに、そう言い切った。確かに、部屋の壁や、天井の塗料は、ここ最近になって、塗り替えられたようで、かなり、綺麗だった。
 「なるほど…。それなら、説得力は、有りますね…。」
 亮太さんも感心した様に、そう言った。だが、イヤホン越しに天木さんから返って来た、答えは、全く別だった。
 『そうなの?』
 「え?」
 京子さんが、驚いた様に、そう言った。
 『私はさぁ、現場に居る訳じゃないから、新しい機器だとか、塗りたての塗料とか、よく分からないんだけど、アミちゃんがそう言うなら、それで、間違いないと思う…。』
 天木さんは、少し不貞腐れた様な声で、そう言った。
 「じゃぁ、アマキちゃんの見解は?」
 柏木さんがそう訊ねると、少し明るくなった、天木さんの声で、返答が返って来た。
 『改装があった所までは、アミちゃんと一緒。その時に、きっと電気系統も弄っている筈だから、その電気盤を弄っているのは、間違いない。だから、それ以前に、その特殊な基盤が埋め込まれていれば、誰かが、何処かのタイミングで気が着く筈。だけど、それがなく、今の今まで、誰にも気が付かれず、不審にも思われなかったところを見るに、改装以降、暫くはその電気盤を開けることが、無かったと思う。
 だから、一か月以内に絞るのが妥当だと思っただけ。
 でも、アミちゃんの方が、正確性が高いから、そっちの方が、説得力高いかな…。」
 私としては、天木さんの説明の方が、説得力があると思う…。それは、京子さん含め、現場にいるメンバー全員だったらしい…。
 『なるほど…。流石アマキさんです。一番説得力ありますね。』
 『まぁ、何であれ、1か月以内は間違いなさそうだな。それで、調べてみるか…。』
 日下部さんと、土屋さんが、そう言った。
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