213 / 281
番外編:裏
#4
しおりを挟む
「いらっしゃい、竹ちゃん。こういう日は、来なくても良いのに。」
玄関を開けると、雨で少し髪を濡らした、大竹が立っていた。左手には、茶色の紙袋を、引っ提げている。
「こういう時こそ、心配なんだろ。な?」
彼は、そう言うと、駆け寄ってきた、狼犬二頭の頭や首回りを一頻り撫で始めた。
「心配してきてくれるのは、嬉しいけど、貴方まで風邪とかひかれると、真紀ちゃんに迷惑掛かるのよ?」
私は、そう言うと、昨日乾いたばかりのタオルを、彼の首に掛けた。
「コーヒーで良い?ブラジルしかないけど…。」
大竹は、「あぁ、頼む。」とだけ答え、ソファに腰を下ろした。
「いつもの、買ってきたぞ。」
大竹は、そう言うと、テーブルの上に、持ってきた、紙袋の中身を、置き始めた。
それは、瓶に詰められた、紅茶の茶葉だった。
「ありがとう。そろそろ買いに行かなきゃって、思ってたところなの。」
私は普段、紅茶は滅多に飲まないが、ここにやって来るお客さんの中では、コーヒーより紅茶の方が好きという人も、居る為、一応両方置いておくようにはしているのだが、はっきり言って、茶葉に関しては、全くの素人だ。だから、いつも馴染みの店で買い揃えているのだが、その店がある街まで、バスで30分程掛かる。
だから、普段は、調子がいい日を見計らい、まとめて買い出しや、ホームズの事務所まで、出かけている。
だが偶に、今日の様に、大竹や真紀、日下部君なんかが、来てくれて何かと、差し入れだの、買い出し等に付き合ってくれる。普段、森の中で、ジャックやリリーの動物たちとしか居ない分、こうやって私の元を訪ねてきてくれるのは、正直嬉しかったりする。
大竹は、髪をタオルで拭きながら、慣れた手つきで、棚の中に、茶葉を仕舞った。
「今日は?一日暇なの?」
「まぁな。日曜日だし。雨だし。する事無かったからな。」
また、ソファにドカッと座ると、辺りを見渡した。
「相変わらず、ここはゆったりとしてるな…。落ち着く。」
「一応、“相談所”だからね。誰でも、落ち着けるように、なってるから、当然よ?」
彼の前にコーヒーの入ったマグカップを置き、ソファに腰を掛けた。
「サンキュー。」
一口すすると、大きめのため息を吐き、更に、深くソファに座り込んだ。
そんな彼の姿を見て、珍しく感じた。
「どうしたの?なんか、最近大変な事でもあった?」
「いや、只々色々と疲れててな…。こうやって、のんびりしたのが、久しぶりだなぁと、思って…。」
玄関を開けると、雨で少し髪を濡らした、大竹が立っていた。左手には、茶色の紙袋を、引っ提げている。
「こういう時こそ、心配なんだろ。な?」
彼は、そう言うと、駆け寄ってきた、狼犬二頭の頭や首回りを一頻り撫で始めた。
「心配してきてくれるのは、嬉しいけど、貴方まで風邪とかひかれると、真紀ちゃんに迷惑掛かるのよ?」
私は、そう言うと、昨日乾いたばかりのタオルを、彼の首に掛けた。
「コーヒーで良い?ブラジルしかないけど…。」
大竹は、「あぁ、頼む。」とだけ答え、ソファに腰を下ろした。
「いつもの、買ってきたぞ。」
大竹は、そう言うと、テーブルの上に、持ってきた、紙袋の中身を、置き始めた。
それは、瓶に詰められた、紅茶の茶葉だった。
「ありがとう。そろそろ買いに行かなきゃって、思ってたところなの。」
私は普段、紅茶は滅多に飲まないが、ここにやって来るお客さんの中では、コーヒーより紅茶の方が好きという人も、居る為、一応両方置いておくようにはしているのだが、はっきり言って、茶葉に関しては、全くの素人だ。だから、いつも馴染みの店で買い揃えているのだが、その店がある街まで、バスで30分程掛かる。
だから、普段は、調子がいい日を見計らい、まとめて買い出しや、ホームズの事務所まで、出かけている。
だが偶に、今日の様に、大竹や真紀、日下部君なんかが、来てくれて何かと、差し入れだの、買い出し等に付き合ってくれる。普段、森の中で、ジャックやリリーの動物たちとしか居ない分、こうやって私の元を訪ねてきてくれるのは、正直嬉しかったりする。
大竹は、髪をタオルで拭きながら、慣れた手つきで、棚の中に、茶葉を仕舞った。
「今日は?一日暇なの?」
「まぁな。日曜日だし。雨だし。する事無かったからな。」
また、ソファにドカッと座ると、辺りを見渡した。
「相変わらず、ここはゆったりとしてるな…。落ち着く。」
「一応、“相談所”だからね。誰でも、落ち着けるように、なってるから、当然よ?」
彼の前にコーヒーの入ったマグカップを置き、ソファに腰を掛けた。
「サンキュー。」
一口すすると、大きめのため息を吐き、更に、深くソファに座り込んだ。
そんな彼の姿を見て、珍しく感じた。
「どうしたの?なんか、最近大変な事でもあった?」
「いや、只々色々と疲れててな…。こうやって、のんびりしたのが、久しぶりだなぁと、思って…。」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
尖閣~防人の末裔たち
篠塚飛樹
ミステリー
元大手新聞社の防衛担当記者だった古川は、ある団体から同行取材の依頼を受ける。行き先は尖閣諸島沖。。。
緊迫の海で彼は何を見るのか。。。
※この作品は、フィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
※無断転載を禁じます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生だった。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

無限の迷路
葉羽
ミステリー
豪華なパーティーが開催された大邸宅で、一人の招待客が密室の中で死亡して発見される。部屋は内側から完全に施錠されており、窓も塞がれている。調査を進める中、次々と現れる証拠品や証言が事件をますます複雑にしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる