探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅫ:見えない爆弾

#9

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 「別に、クドーさんを卑下したわけでは…。
」と、亮太さんが、言い訳をし始めたタイミングで、柏木さんのスマホが鳴った。そうやら、メッセージアプリの通知音の様だ。
 「おしゃべりは、そこまでにして、さっそく動きましょう。」
 京子さんが、そう言い、柏木さんに、メッセージの内容を、見る様に、指示した。
 『今送ったのは、“多分”爆弾か、それに類似した装置が、設置されていると、思われる場所。カッシーとクドーは、刑事さんたち、総動員で、それを探し出して。発見した場合、速やかに報告よろしく。爆破物処理の人が来るまで、絶対に、人は近づけさせないで。』
 天木さんが、詳細を説明している間に、柏木さんは、今のデータを、私と前園警部のスマホに転送させた。データの内容は、このホテルの見取り図と思われる、物に、赤く丸が付いている箇所が、幾つか或る。数にして、大体、20以上は、あるだろう…。
 「こんなに、候補が、あるんですか?」
 『それくらい、このホテルは、大きいからね。これでも、相当絞った方だよ…。』
 新帝都ホテルは、都内でも、最大級の大型ホテルだ。
 階層は地上部だけで39階。部屋数は、3000を超え、更には、大広間や宴会場、会議室などといった、部屋も、幾つか存在する。
 それほど広くて、大きな施設内から、その様な装置を探すとなると、確かに、骨がおれる。そして、今回のこの事件の情報に関しては、混乱等を、避けるため、一部の人間を除き、警察と、ホームズのメンバーしか知らない。まして、マスコミや、メディアの人間にも、最新の注意を払い、詳細の報告を、行っていない。
 だから、公にならずに、隠密に処理するようにと、命令が出ている。
 だから、人を増員するにしても、限度がある。あまりにも、大勢で行動すると、今このホテル内に居る、一般人や、報道関係者、政治関係者等に、怪しまれることだろう…。
 「どうやって、動きましょうかね…。もう少し、絞れれば、こちらとしても、動きやすいですが…。」
 『流石に、これ以上は、私には無理…。図面上じゃ、見えない世界があるから…。』
 天木さんが、そう応えた。確かに、図面はあくまでも、標準的なものに過ぎない。ちょっとした、物の位置や、部屋の間取りなんかは、変わっていても、可笑しくはない。
 “疑わしきは罰せよ”とは、よく言ったものだ。
 「仕方ない…。一つ一つ、虱潰しに、探しますか…。」
 「爆弾の形状とかって、凡そ検討は付いているんですか?」
 『多分、タイマー式の、“明らかにこれでしょ”っていう感じの物だと思う。』
 「よし、じゃ、探しますか。」
 こうして、天木たちの、長い一日が、幕を開けた。
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