探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅫ:見えない爆弾

#7

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 柏木さんの居る、原動機室は、地下の2階から、更に、少しだけ下った位置に、存在していた。
 「やぁ。クドーさん。」
 彼女は、私の姿を見ると、右手を顔の近くで振り、そう挨拶した。
 「“やぁ”って、何でそんなに緊張感が無いんですか?」
 「ん~。ノリかな?」
 警察になって、数年。色々な事件や、案件を対応してきた。だが、どれも、当然、それなりの緊張感を持って、臨んでいた。ノリで、事件を対応するようなことは、絶対に無かった。ましてや、今回の様な、“人命”が掛かっている様な事件なら、尚更だ。
 「流石に、“ノリ”はどうかと、思いますが…。」
 「まぁ、ノリは、言いすぎだけど、現状、“油断しろ”って言うのが、難しいでしょ?」
 柏木さんが、顎に人差し指を当て、更に、続けた。
 「一番、安全な場所に、アマキちゃんが、陣取って、犯人さんが、考えうる、全てのパターンを、模索してるし、一番危険な、
“会場”の方は、ホームズウチの狂犬二匹が、眼と鼻を光らせてるから、対人なら何とかなる。
 ツッチーは、唯一単独で行動して貰って、別角度から、犯人像を算出中です。それだけじゃなくて、”裏”ラストホームズマキさん達も、今回全員、もれなく参戦してますから、もう、負ける気しません。」
 柏木さんがそう言うと、隣で聞いていた、浅野さんも、賛同するように、頷いた。
 彼等の実力は、よく知っている。だからこそ、偶に、我々の“味方”で良かったと、思うときが何度かある。
 だからこ、怖いのだ。この状況ですら、余裕と取れる、この落ち着きといい、実際、それを説得させる、優秀な、人材の存在。
 警察のトップの人たちですら、彼等に依頼するくらいに、我々からは、認知されている。
 これが、もし、逆の立場となった場合…。
 「クドーさん!」
 急に、大声で名前を呼ばれ、身体が反射的に、ビクついてしまった。
 「それ以上は、考えないで。」
 私の名前を呼んだのは、京子さんだった。
 「私たちが、一番よく知っています。警察を敵に回してしまった時のことを…。ですが、安心して下さい。」
 イヤホンの奥から、天木さんが、続けた。
 『私たちは、クドー…警察は、絶対に裏切らないし、敵には回らない。そう言う、約束だから…。それに、お金貰ってるからね。
“やっぱりごめんなさい。”なんてことはしない。その代わり、ウチの面子、ちょっと癖が強いから、振り回されすぎないように…。』
 彼女に続く様に、柏木さんも、“そう言う事”と、相槌を打った。
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