探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅫ:見えない爆弾

#1

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 爆弾捜査が始まってから、数時間が経った。先ほど、土屋から、人質事件の方は、片が付いたと、連絡があり、こちらに、合流するとのことだった。
 「とにかく、無事で、良かったですね。」
 パソコンの前に、座っている、笹井がそう言った。
 「そうね…。でも、こっちは、全然進展がないから、暇でしょうがないね…。」
 ホームズの捜査本部として、利用している、トレーラートラックの荷台に、現地の様子が観察できるモニター6台と、それぞれの音声を拾えるスピーカーが、設置してある。
 これで、内部の様子は、逐一、確認できるのだが、どこの画面も、特に変わりはない…。
 「カエの方は、何か、見つけた?」
 柏木と、亮太が、施設内で、件の爆発物と思わしき、代物を、調査している。
 『今のところ、怪しい物はないよ?あったら、即報告するけど…。
 それより、本当に、そんな物設置されてるのかなぁ…。普通に、悪戯なんじゃない?」
 つまらなそうな声が、スピーカーから聞こえた。
 その線は、限りなく薄いだろう…。日本の政治家や、官僚たちを、狙った割には、敢えて、英語の切り抜きを使用し、事件の人物像を、攪乱させている。それだけなら未だしも、警察宛に、送ってきたということは、挑発とも取れる行為だ。
 「国際テロ組織も、何やら動いているらしいからね…。結構、信憑性が高いと思うよ。それに…。」
 言葉が詰まってしまった…。というのも、何かが、ずっと引っ掛かっていた。しかし、それが、“何に”、“何処で”なのかも、不明だった。とにかく、そんな気がして、ならなかった。だから、それを、言おうかどうか、を迷ったのだ。
 ただの、思い過ごしかもしれない…。そんな、曖昧な情報は、柏木楓には、必要名だろう…。報告するなら、もう少し、現実味を帯びてからが、良いだろう…。
 『“それに”、何?』
 「あ、いや、何でもない…。」
 『ふ~ん…。それにしても、これだけ、探しても、見つけられないなら、肉眼では、見えないんじゃ………っ!』
 柏木の言葉が、途中で、止まった。まるで、何かに、気が付いた様に…。
 「どうしたの?」
 『…一般人が、イメージしている爆発と、実際に設置された爆弾の、“効果”が全く違うんじゃない?』
 「効果?」
 『火や煙が出るのが、一般的なイメージだけど、熱も光も、煙も出さないけど、爆発的なエネルギーを、発するものが、存在します。それが、“気体”です。』
 「気体?」
 気体そのものは、知っている。だが、気体に、他人に物理的に、被害を与えられるのか、どうかというのは、かなりのエネルギーが必要なはずだ…。
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