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ファイルⅪ:先手必勝
#25
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秋山さんが店内に、突入してから、5分が経過した。何やら、騒がしいのは、外に居る私たちにも、伝わっている。それでも、この場に居る警察は、何もできない…。既に、近場には、SATも待機させているが、それでも、突入に踏み込めない。
たかが二人相手。この場に居る、全員で取り押さえれば、事件解決も直だ…。
それなのに、京子さんは、それを、許してくれない…。まるで、時間を稼いでいるかの様に…。
店内が、急に静かになった…。さっきまで、派手に、何かが壊れる音や、痛々しい音が、響いていたのだが、秋山さんが、三嶋と森田を制し、鎮圧したのか、あるいは、その逆か…。
それでも、私たちは、人質たちの安全が分からない以上、強行突入は、出来ない…。だから、祈るしかなかった…。刑事になって、結局、神頼みというのは、些かどうかと思うが、今はそれしかすることが無い…。
秋山さんに、もしもの事があった時の為に…。
その時だった。猛々しいアイドリング音を、響かせ、日下部さんの六輪車が、戻ってきた。
車を止め、運転席から降りてきた日下部さんの手には、A4サイズの封筒を掴んでいた。
「やっと戻ってきたんですね。」
彼の姿を見た京子さんが、ホッと胸を撫で下ろした様に、そう言った。
「遅くなって、申し訳ない。今、どんな状況ですか?」
日下部さんは、持っていた封筒を、彼女に手渡し、そう訊ねた。
「秋山君が、突入して行ったよ。さっきまでは、何やら、騒いでいましたが、今は、何故か、静かになりました。」
前園警部が、京子さんに変わり、そう応えた。
「そうですか…。」
日下部さんが、そう呟くと、彼も、店の入り口に向かって、歩き始めた。
「待って下さい!」
警察が居ながら、これ以上、好き勝手にはさせられない。幾ら、捜査権限を託されたとはいえ、そんな危険な事、させられるわけがない…。
それは、梅木警部も同じ考えらしく、私に続いて、彼に怒鳴ったが、またしても、京子さんに、制された。
「ここは、私たちに任せて下さい。」
「そんな事言っても、向こうは、銃を持っているんですよ!これ以上は、流石に容認出来ません!」
私は、声を荒げた。幾ら、日下部さんと秋山さんと言えで、相手は、犯罪者。何をしてくるか、分からない。
だから、怖いのだ。人間に限らず、失う物が無い者が、追い詰められた時が、一番の“狂気”となるのだ…。
「工藤や、刑事さんたちの、思いは分かります。でも、ここは私たちに任せて、頂きたいです。
私は、土屋さんの様な、能力と頭の回転率を、持ち合わせて居る訳ではありません。
それでも、土屋さんが、動いているので、私は、私のやりたい様に、やる。ただそれだけです。
安心してください。ツチヤさんとリューさんが行ったんです。彼等を信じて下さい。」
そう言う彼女の腕は、かなり振るえていた。
たかが二人相手。この場に居る、全員で取り押さえれば、事件解決も直だ…。
それなのに、京子さんは、それを、許してくれない…。まるで、時間を稼いでいるかの様に…。
店内が、急に静かになった…。さっきまで、派手に、何かが壊れる音や、痛々しい音が、響いていたのだが、秋山さんが、三嶋と森田を制し、鎮圧したのか、あるいは、その逆か…。
それでも、私たちは、人質たちの安全が分からない以上、強行突入は、出来ない…。だから、祈るしかなかった…。刑事になって、結局、神頼みというのは、些かどうかと思うが、今はそれしかすることが無い…。
秋山さんに、もしもの事があった時の為に…。
その時だった。猛々しいアイドリング音を、響かせ、日下部さんの六輪車が、戻ってきた。
車を止め、運転席から降りてきた日下部さんの手には、A4サイズの封筒を掴んでいた。
「やっと戻ってきたんですね。」
彼の姿を見た京子さんが、ホッと胸を撫で下ろした様に、そう言った。
「遅くなって、申し訳ない。今、どんな状況ですか?」
日下部さんは、持っていた封筒を、彼女に手渡し、そう訊ねた。
「秋山君が、突入して行ったよ。さっきまでは、何やら、騒いでいましたが、今は、何故か、静かになりました。」
前園警部が、京子さんに変わり、そう応えた。
「そうですか…。」
日下部さんが、そう呟くと、彼も、店の入り口に向かって、歩き始めた。
「待って下さい!」
警察が居ながら、これ以上、好き勝手にはさせられない。幾ら、捜査権限を託されたとはいえ、そんな危険な事、させられるわけがない…。
それは、梅木警部も同じ考えらしく、私に続いて、彼に怒鳴ったが、またしても、京子さんに、制された。
「ここは、私たちに任せて下さい。」
「そんな事言っても、向こうは、銃を持っているんですよ!これ以上は、流石に容認出来ません!」
私は、声を荒げた。幾ら、日下部さんと秋山さんと言えで、相手は、犯罪者。何をしてくるか、分からない。
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私は、土屋さんの様な、能力と頭の回転率を、持ち合わせて居る訳ではありません。
それでも、土屋さんが、動いているので、私は、私のやりたい様に、やる。ただそれだけです。
安心してください。ツチヤさんとリューさんが行ったんです。彼等を信じて下さい。」
そう言う彼女の腕は、かなり振るえていた。
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