探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#23

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 「秋山さん突っ込んで行っちゃいましたけど…。」
 私は、粉々に割れたコンビニの、出入り口の、ドアを見詰め、そう言った。
 彼は、車がコンビニの前に到着すると、早々、何の躊躇いもなく、事件現場に、生身で、特攻していった…。相手は、銃を武装した、元自衛隊。喧嘩が強いと言えど、素人も同然の秋山さん単体で、敵うかと言われると、相当不安だ。だから、私たち、警察も、後に続くと提案したのだが、京子さんが、それを許さなかった。
 「大丈夫です。何の勝算も無しに、アッキーを特攻させる程、ツチヤさんも、焦っている訳じゃない。寧ろ、計画の内だから、アッキーに特攻させた、と言った方が良いかも。」
 

 「な、何だ…。お前も、コイツの仲間か?」
幾ら、自衛隊で、鍛えられた、身体を有している三嶋ですら、目の前に、突如として表れた、190センチ近くある、大男が現れれば、流石に、怯むだろう。
 「そうだ。だから、そろそろ、ツチヤさんと、人質の解放していただけないですかね…。」
 “面倒くさい”と、言わんばかりの、口調で、三嶋に、そう告げた。
 だが、三嶋にも、執念がある。だからこそ、こんな人質事件を起こした。秋山の一言で、三嶋が、大人しく、言う事を、聞く筈がない…。
 「それは、出来ない相談だな…。折角ここまで、事を起こしたんだ。仲間の為にも、ここで、辞めて堪るか…。」
 「宍戸なら、警察に、身柄を拘束されたぞ。必死こいて、抹消しようとしたシステムのデータも、ウチで復元を掛けている。解析されるのは、時間の問題だろ…。」
 三嶋の言葉を、半ば遮る様に、秋山が、そう話した。
 「な…。」
 三嶋は、言葉を失っていた。
 「そうと分かったら、サッサと終わりにしねぇか?」
 「悪いが、俺たちも、時間が無ぇんだ。ここいらで、自主してくれねぇか?俺も、これ以上は、突き詰めたくない。」
 この事件は、正直、これ以上、長い時間を、要している、暇はない。一刻も早く、天木たちの方に、加勢しなければならない、という事もあるが、それ以外にも、もう一つ、暴露しては、ならない真実が、この事件には、あるから。それを、悟られる前に、早く決着を付ける必要がある。

 「ハハハ」
 堰が切れた様に、三嶋は笑い出した。
 「だったら、もう少し、どうにかこうにか、爪痕を残した方が、良いだろうな…。」
 一頻り笑った後、突然、追ていたライフル銃を掴み、秋山向かって、振りかぶった。
 三嶋の叫び声と共に、ライフル銃は、空を切った。秋山が、身体を、後ろ側に、反らせた。
 「それが、お前の答えで、良いんだな?」
 秋山が、そう呟いた。
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