探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#22

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 さっきまで、緊張の糸で張り巡らされた店内は、俺の話で、哀れみの感情で満たされた。そのお陰で、この事件の真相も、はっきりとした。
 「世の中には、俺以外にも居るんだな…。」
 三嶋が、嘆く様に、そう呟いた。
 「そう言う事だ。そうと分かったら、もう投降したらどうだ?今なら、無駄な罪を、一つでも減らせるぞ?」
 「もう少し…。結果が出るまでは、諦める訳には…。」
 森田が、そう答えた時だった。
 『残念だが、結果なんざ、出ねぇよ。』
 店内のスピーカーから、相沢の声が響いた。
 「誰だ!」
 驚いた、三嶋は、立ち上がり、天井に向かって、そう叫んだ。
 『そこに居る、ツチヤさんの仲間だ。話の内容は、全て聞かせて貰った。そして、その店舗のネットワーク事情と、システムの解析もとっくに、済ませてある。お前さん達、その店内で発信した、SNSのメッセージは、俺が全て回収と処理をさせて貰った。
 つまり、世の中に発信されたデータは、今のところ、一つもない。』
 「嘘を…嘘を吐くな!」
 相沢の言葉を聞いた三嶋が、そう叫んだ。
 『嘘じゃねぇよ、お前さん達は、現場にツチヤさんが、存在した時点で、この事件は、既に詰んでるんだよ。』
 三嶋が、こちらを睨み、胸倉を掴んできた。
 「これだから、警察なんざ、嫌いなんだよ!感情には左右されない癖に、金と権利には、弱い一般市民の敵なんだよ!」
 三嶋だけでなく、他の憎悪が、俺の身体を突き刺す様に、向けられた。
 ひと昔前なら、こんな状況、逃げ出してしまいたくなるが、今は、何とも無い…。何故なら、今自分が考えていることが、絶対に正しいと思うからだ…。
 「悪ぃな、騙してたわけじゃないが、俺も、今のスピーカーの奴も、実は、警察じゃねぇ。職業柄、色んな偽造名刺と、4種類のスマホ、それから、スパイグッズってやつを、持っている。」
 俺が、そう言うと、森田が、怪訝な表情で、訊ねてきた。
 「貴方は、一体、何者なのですか?」
 「俺は、土屋慎介。探偵だ。」
 「探偵って、浮気とか、身辺調査とかやるあの?」
 客の一人が、そう声を出した。
 「そうだ。だが、俺の事務所は、かなり優秀でな。警察からの依頼も、少なくない。
 今回は、俺が勝手にこの事件に、巻き込まれたから、当然、俺の仲間たちも動きだしている…。」
 「結局は、警察と繋がってんだろうが!」
 「俺が、そんなヘマするかよ。俺達を、なめるなよ?」
 その時、コンビニの入り口のガラス戸が、

 ガシャン!

 と轟音を立てて、割れた。
 「ツチヤさん、迎えに来ましたよ。」
 そこには、秋山が、立っていた
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