探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#20

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 「…。」
 三嶋は、俺の言葉に、押し黙った。
 「個人経営の商店ならまだしも、フランチャイズの、大手コンビニとなれば、ネットワークや、システム、通信回線等を、簡単に弄るわけには、いかない。だから、外部から目立つ、大まかな工事を、本来なら避ける。
 だが、回線上に、只咬ませるだけの機器なら、気付かれないようにすることは、出来ると、思ってな。」
 バックヤードにある、店長用のコンピューターの近くにあった、ルーター等の通信機器を、掻き分け、奥で怪しげな、光を放っている、機器を、引っ張り、それを、見せた。
 「これは、一見すれば、只の通信系の機器だが、この系列のコンビニでは、使用していない、機器だ。」
 企業のネットワーク機器と言うのは、ある程度、統一化されている。新旧含めれば、多少、誤差はある物の、基本的には、同一のメーカー品や、同じ通信事業者を使用することが多い。今俺が手にしているのは、このコンビニでは、先ず、お目にかかる事がない、メーカーの機器だ。
 「予め、コイツに細工して、フィルタ機能を追加しておいたのだろう?」
 三嶋の顔色が、更に、険しくなった。それでも、更に、続ける。
 「更に、これを、誰にも、怪しまれることなく、店内に設置出来た人物は、たった一人、森山店長、あんたしかない。
 当然、他の店員やスタッフって、可能性があるが、この店を知り尽くしているのは、店長クラス。当然、客足の波もな…。」
 森山は、驚いた表情をしていたが、あきらめたのか、深いため息を吐き、口を開いた。
 「いつから、私が共犯だという事に、気が付いていたのですか?」
 「俺が、この店に入った瞬間からだよ。平日の朝にしては、客足も、スタッフの数も、少ないから、可笑しいなと、思ってな。」
 それだけでは、決定打にはならない。ただ、この店に入店したとき、“緊張”と言う感覚が、ダイレクトに伝わってきた。それが、確実な決定打なのは、今は、控えて置く…。そっちの方が、説得力がないから…。
 「一番決定打になったのは、先ほど、“本結び”の説明した時、森田さん、一瞬反応しましたね。まるで、その結び方を知っていたかの様に…。」
 そう言い終えると、森田が語りだした。
 「そう…。刑事さんが察している様に、私と三嶋は、元自衛隊の同期であり、三嶋の嫁さん、『明菜』とは、従妹です。」
 「おい!森田!」
 三嶋が、制するように、怒鳴った。だが、それを、諭す様に、森田が、話した。
 「この刑事さんには、全て、お見通しの様だ…。それは、お前も、分かっているだろ…。」
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