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ファイルⅪ:先手必勝
#13-9
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「お久しぶりですね。公務員のお姉さん。」
宮間さんから、アイスコーヒーを貰いながら、そう言った。
「お、お久しぶりです。えっと、その…。前に言っていた事、少し気になって、話だけでも、聞きに来ました。」
「話だけでも良いの?今のお姉さんの顔見て居れば、仕事が辛いことは、一目両全ですよ?」
「え?そ、そんなに、やつれていますかね…。」
私がそう答えると、彼は声を上げて、割らし出した。
「ごめんごめん、嘘。お姉さんの顔は、いつも通り、可愛い顔していますよ。」
「ッ…。」
可愛いなど、言われ慣れているわけでもないから、お世辞でも、少し照れてしまう。
「こら。女性をあまり揶揄うんじゃないの。」
「痛…。」
白衣の女性が、彼の頭を軽く小突いた。
「ごめんなさいね?この子、他人を煽てるのが得意な物で…。」
立て続けに、保母さんが、そう言った。
「い、いえ…。特に気にしていないので…。」
気にしていないのは、嘘だが、何とか、平然を装った。
「でも…。」
彼女は、呟くと、私の身体全体を、舐める様に、眺め、最後に、私の顔を、見詰めた。
他人に、見詰められるのも、余り慣れて居ないので、これもまた少し照れる…。
「な、何ですか?」
「貴女。どっちにしろ、今の仕事、合っていないでしょ…。そんな顔している。」
そんな顔…。たった今、彼にも同じことを言われた。だから、彼女のも、嘘なのでは?
そう疑い始めた時、宮間さんが、口を開いた。
「実採さんのは、“嘘”ではありませんよ。彼女は、心療内科。仕事柄、真実と、嘘を、表情と、態度で、見分ける事ができるらしいです。
ちゃんと、真実をぶつけてみては如何ですか?」
彼の言葉に、背中を押され。私は、先ほど、天木さんに、話した内容を、彼等にも、話した。その後、私は、彼等に、勧められ、仕事を辞め、『ホームズ』に入社した。最初は、事務仕事ばかりだったが、前の理想が伴わない、職場とは違い、幾らか、気が楽だった。何より、上司、先輩の区別が曖昧なため、特別な、気遣いをしなくても、済むこと。
これだけ、過ごしやすい環境で、仕事が出来るなんて、想像もしなかった。だから、今の仕事内容でも、私は、気にならないし、寧ろ、楽しい。それに、私の秘密だけでなく、彼の秘密も、知ってしまった。
だから、一層。彼の恩に、少しでも、返せる様にとの、目標が出来た。だから、どんなに、大変な仕事でも、頑張れる…。
宮間さんから、アイスコーヒーを貰いながら、そう言った。
「お、お久しぶりです。えっと、その…。前に言っていた事、少し気になって、話だけでも、聞きに来ました。」
「話だけでも良いの?今のお姉さんの顔見て居れば、仕事が辛いことは、一目両全ですよ?」
「え?そ、そんなに、やつれていますかね…。」
私がそう答えると、彼は声を上げて、割らし出した。
「ごめんごめん、嘘。お姉さんの顔は、いつも通り、可愛い顔していますよ。」
「ッ…。」
可愛いなど、言われ慣れているわけでもないから、お世辞でも、少し照れてしまう。
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気にしていないのは、嘘だが、何とか、平然を装った。
「でも…。」
彼女は、呟くと、私の身体全体を、舐める様に、眺め、最後に、私の顔を、見詰めた。
他人に、見詰められるのも、余り慣れて居ないので、これもまた少し照れる…。
「な、何ですか?」
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そんな顔…。たった今、彼にも同じことを言われた。だから、彼女のも、嘘なのでは?
そう疑い始めた時、宮間さんが、口を開いた。
「実採さんのは、“嘘”ではありませんよ。彼女は、心療内科。仕事柄、真実と、嘘を、表情と、態度で、見分ける事ができるらしいです。
ちゃんと、真実をぶつけてみては如何ですか?」
彼の言葉に、背中を押され。私は、先ほど、天木さんに、話した内容を、彼等にも、話した。その後、私は、彼等に、勧められ、仕事を辞め、『ホームズ』に入社した。最初は、事務仕事ばかりだったが、前の理想が伴わない、職場とは違い、幾らか、気が楽だった。何より、上司、先輩の区別が曖昧なため、特別な、気遣いをしなくても、済むこと。
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だから、一層。彼の恩に、少しでも、返せる様にとの、目標が出来た。だから、どんなに、大変な仕事でも、頑張れる…。
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