177 / 281
ファイルⅪ:先手必勝
#13-2
しおりを挟む
「雑誌、好きなんですか?いつも読んでいるみたいなので、気になって…。」
スマホが流行している時代に、雑誌をほぼ毎日、しかも、違うジャンルの物を読み漁る学生など、そうそういない。
「あぁ、これ?別に好きっていうわけじゃ、無いですよ。ただ単に、知識が欲しいだけです。」
「知識?」
「ネットで調べるのも、悪くないですが、雑誌の方が、専門的な知識を、蓄えるには、一番良いと思っています。」
「専門的なのに、色々なジャンル読んでいますよね?」
「広範囲な知識が、僕等には、必要なんです。」
“僕等”と言う言葉に、少し引っかかった。だが、それを聞く前に、電車が来てしまい、二人とも、人の波に飲まれてしまった。
それから、毎朝、少しずつではあるが、彼と、話す様になり、数か月が過ぎた頃、彼はまた、ぱたりと、この駅に顔を出さなくなった。
私も年明けから、もう少し、職場に近い所に、引っ越す予定だったから、この駅を利用するのも、あと、数える程度しかない…。
だから、最後くらい、それを伝えたかったのだが、それを逃してしまった…。それも、何かの縁だと思っていたのだが…それが、運命だと確定づける、出来事が起こった。それは、年明け、引っ越しも終わり、新しい、最寄り駅のホームに向かう、階段を、降りている時だった。見覚えのある学ランに、見覚えのある後ろ姿、手にはスポーツ雑誌…。間違いなく、“彼”だった。
一瞬ドキッとしたものの、声を掛けずにはいられなくなり、彼の下まで、駆け足で階段を下って行った。だが、ラッシュ時の人の多さも相まって、私は、途中、バランスを崩し、転びかけた。だが、私の身体は、階段に叩きつけられる代わりに、彼の右腕に、支えられていた。
「階段で、無理に駆け降りるのは、危険ですよ。黒髪のお姉さん。」
「ご、ごめんなさい…。ありがとうございます…。そ、それより、お久しぶりですね。貴方も、お引越しされたんですか?」
「いいえ、この駅の近くに、寝床にしている所があるんです。最近は、そこから学校に通ってます。
お姉さんこそ、引っ越しなさったんですか?」
「はい。職場に近い所に、引っ越そうと、前々から思っていました。」
身体を起こしてもらいつつ、彼の質問に答えた。
「やはりそうでしたか。お姉さんの職場は、何とか“庁”や、何とか“省”と言われるところですね。」
「え?」
図星を突かれた…。とはいえ、隠していた訳でもない。今まで、聞かれなかったから、答えなかっただけだ…。
「どうして、分かったんですか?」
スマホが流行している時代に、雑誌をほぼ毎日、しかも、違うジャンルの物を読み漁る学生など、そうそういない。
「あぁ、これ?別に好きっていうわけじゃ、無いですよ。ただ単に、知識が欲しいだけです。」
「知識?」
「ネットで調べるのも、悪くないですが、雑誌の方が、専門的な知識を、蓄えるには、一番良いと思っています。」
「専門的なのに、色々なジャンル読んでいますよね?」
「広範囲な知識が、僕等には、必要なんです。」
“僕等”と言う言葉に、少し引っかかった。だが、それを聞く前に、電車が来てしまい、二人とも、人の波に飲まれてしまった。
それから、毎朝、少しずつではあるが、彼と、話す様になり、数か月が過ぎた頃、彼はまた、ぱたりと、この駅に顔を出さなくなった。
私も年明けから、もう少し、職場に近い所に、引っ越す予定だったから、この駅を利用するのも、あと、数える程度しかない…。
だから、最後くらい、それを伝えたかったのだが、それを逃してしまった…。それも、何かの縁だと思っていたのだが…それが、運命だと確定づける、出来事が起こった。それは、年明け、引っ越しも終わり、新しい、最寄り駅のホームに向かう、階段を、降りている時だった。見覚えのある学ランに、見覚えのある後ろ姿、手にはスポーツ雑誌…。間違いなく、“彼”だった。
一瞬ドキッとしたものの、声を掛けずにはいられなくなり、彼の下まで、駆け足で階段を下って行った。だが、ラッシュ時の人の多さも相まって、私は、途中、バランスを崩し、転びかけた。だが、私の身体は、階段に叩きつけられる代わりに、彼の右腕に、支えられていた。
「階段で、無理に駆け降りるのは、危険ですよ。黒髪のお姉さん。」
「ご、ごめんなさい…。ありがとうございます…。そ、それより、お久しぶりですね。貴方も、お引越しされたんですか?」
「いいえ、この駅の近くに、寝床にしている所があるんです。最近は、そこから学校に通ってます。
お姉さんこそ、引っ越しなさったんですか?」
「はい。職場に近い所に、引っ越そうと、前々から思っていました。」
身体を起こしてもらいつつ、彼の質問に答えた。
「やはりそうでしたか。お姉さんの職場は、何とか“庁”や、何とか“省”と言われるところですね。」
「え?」
図星を突かれた…。とはいえ、隠していた訳でもない。今まで、聞かれなかったから、答えなかっただけだ…。
「どうして、分かったんですか?」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる