探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#10

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 バツ印を、書き終えたのか今度は、定規を持ち出し、バツ印から、バツ印を線で結びはじめ、最終的に一か所に向け線が引き延ばされた。
 その場所は、どうやら、この現場らしい。
 「これは?」
 「遠隔できる装置を、カスケードできる店を、引っ張っています。単純に考えて、ソウ君が追跡不能なレベルで、色んなPCを介しているって考えると、それを見張る人が必要です。」
 「それって、つまり、三島に仲間が居るってことですか?」
 「そう。このままソウ君に追跡させてもいいけど、かなりの技術を要しているのは確実です。そうなれば、どこかのタイミングで、探知される可能性がある。
 そして、天木さん曰く、その仲間っていうのは、必ず、現場の近くに居たがる傾向があるらしいです。」
 ついには、その線すらも、書き終え、京子さんの『地図』が完成した。
 「で、結局その、仲間が居ると思われる場所は?」
 梅木警部も、焦った様に彼女に訊ねた。
 「もう少し、待ってください。」
 そういうと、“地図”を、見詰め始めた。まるで、机まで穴が開いてしまうのではないかと、思うほどの、眼光だ…。
 ほかの刑事たちも、固唾をのんで、彼女の“答え”を待った…。
 そして…
 「見つけた…。」
 京子さんがそう呟くと、一点を、黒のマジックペンで、小さく丸印を付けた。ただ、そこは、赤のバツ印が、書かれた隣に位置している。つまり、ネットカフェや漫画喫茶ではない場所だ…。
 「ここって?」
 「ただのチェーン店のカフェ。実はこの店の、ある場所に座れば、隣のネカフェのWi-Fiが、拾える、唯一の場所。
 もし犯人が、ソウ君と、同じレベルの技術と知識があるとすれば、防犯カメラや、身分証の提示が求められる、ネカフェとかには、行かないと思います。」
 「なるほど…。上出来だ。捜査班、今すぐ現場に急行しろ。」
 梅木警部の、指示が出た。
 「待って下さい。名前も顔も知らないのに、どうやって、“人”を捜査するつもりですか?」
 京子さんのその一言に、梅木警部と、他の刑事たちも、押し黙った…。
 「いい案が、ありますので、私もその現場に行きます。」
 「なるほど。じゃぁ、私がそっちの現場に向かいます。梅木君は、こっちの指揮を頼みます。工藤君も、着いてきて。」
 そういうと、近くにあった、覆面パトカーのエンジンを掛けた。
 「それと、男性刑事も数名下さい。仲間が一人とは、限りませんから。」
 「分かった。E班、前園達に着いていけ。」
 「はっ!」
 三人の男性刑事が、勢いよくあいさつし、別の覆面パトカーに、乗り始めた。
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