探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#8

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 『ドンピシャだな。』
 いち早く声を上げたのは、相沢さんだった。
 『さっき言ってた、降りた駅の最寄りにあるネカフェから、そのメッセージが、発信された形跡がある。
 おそらく、遠隔かなんかで、そのネカフェと繋いでいるんだろうな。』
 それで、合点がいった。三島が、ネカフェを転々としていたのは、この計画の下準備だった…。そうと分かれば…。
 「よし、その場所に迎え、何か手がかりがあるかもしれない。」
 前園警部に指示を、出したが、相沢さんに制された。
 『そいつは、不可能だ。』
 「どうしてですか!」
 「場所が分からないのね…。」
 答えたのは、京子さんだった。
 『流石だな、京子。アドレスが、たどり切れねぇ…。こんなの、初めてだ…。』
 「そりゃそうよ、さっき言った“系列店”都内だけでも、数十店舗存在するし、他のネカフェも使っていたとしたら、百店舗を超える可能性がある。その中から、たった一台の遠隔で使われているPCを短時間で、探し出すなんて、ほぼ不可能…。」
 「そんな…。」
 せっかく、掴んだ有力な情報なのに、それを調べるのに、莫大な時間と人が、必要だ…。
 『だがある意味朗報だな…。』
 「あぁ、そうだな…。」
 「え?」
 「大丈夫ですよ、クドーさん。相手がシステムとか、機械なら、どうにもならないけど、“人”ならどうにかできる。」
 そういうと、京子さんは、都心部の巨大な地図を、六輪車から取り出した。
 「10分だけ、私に頂戴。」

 その時だった。六輪車が、大きな唸りを上げた。
 「アミさん、前園さん、ここは頼みました。」
 今まで、不動だった日下部さんが、いつの間にか、六輪車の運転席に、乗っていた。
 「日下部さん、どこ行くんですか?これからって時に!」
 「ツチヤさんに、指示もらった。今からそっちに向かう。だから、ここは頼みました。」
 そういうと、六輪車を走らせ、どこかに、行ってしまった…。
 「本当に、土屋さんと、日下部さんは、一体どうやって、連携取っているんでしょう…。」
 「そんなことより、早く遠隔されてる、ネカフェ、探さないと…。」
 そういうと、京子さんは、机の上に、地図を広げた。
 「ソウ君が、調べてくれた、『三島がここ一週間で、乗り降りした駅が、ここ…。』
 そして、ぶつぶつ言いながら、地図上に、赤いマジックペンで、駅の名前に、丸を付けて言った。
 「よし!」
 丸印を付け終わると、自分の左の頬っぺたを、二度軽く掌で、叩いた…。
 「始まるぞ…。」
 「え?」
 前園警部がそう言った直後だった。
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