探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#7

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 『副総理大臣、本堂宗久には、隠し子である、本堂誠人という、次男が、存在する。
 奴は、高校の頃から、素行が悪く、大小さ様々な、罪を犯した。
 その内の一つに、“殺人”がある。』
 たった、100文字足らずの、その文は、その場に居た人全員を、驚愕させるものだった。
 男性刑事が、見せてきたSNSの内容には、煙草を蒸かした、若い男性の、画像が、写っていた。
 「本堂副総理に、次男が居たのか…。」
 「殺人だって?」
 などと言った、困惑の声が、現場に広がった。あの梅木警部すら、驚きを隠せない様子だった。
 「今すぐ、この、“本堂誠人”って人の前科を調べて。」
 唯一、冷静だった、京子さんが、そう言った。だが、彼女のその反応には、少し、違和感があった。
 「京子さん、もしかして、知っていたんですか?」
 「…昔財務省に勤めていた時期があってね…。その時、噂を聞いたくらいだったわ…。」
 「財務省?」
 「えぇ…。自慢する訳では無いけど、所謂、元官僚ってやつね…。」
 元官僚…。もっと言い換えれば、元エリートだ…。時として、皮肉にも、上級国民とも呼ばれる事もある…。
 「私が、まだ現役だったころの、約8年前は、本堂はまだ、財務大臣だった…。その時に、同僚に聞いた、話しだったから、本当にただの、噂だったと思っていた…。」
 「なるほど…。それは、一刻も早く、事実確認を、急がねばなりませんね…。」
 前園警部が、そう呟き、梅木警部を差し置き、他の刑事たちに、指示をし始めた…。
 「A班からC班は、公安に伝えて、副総理の身柄の確保と、護衛の強化。
 D班からH班は、このメッセージの出どころを、特定しろ。相沢協力してくれ。
 そのほかのメンバーは、現場で待機。追加の指示を待ってくれ。」
 その適格な指示は、私が知っている、“前園豊”だった。
 最近は、余り現場に出ることは、少なくなったと、聞いていたが、刑事であり、警部である彼の、仕事ぶりは、鈍っている事は、なさそうだ…。
 「前園警部、私は、何を担当すれば…。」
 「工藤ちゃんと、アミちゃんは、ここで、残って、他の、班の報告を、上手くまとめてくれ。リュー君は…特に私からの指示は無し。自分の仕事に専念してくれ。」
 『はい!』
 
前園豊。彼は、ノンキャリアでありながら、26歳という若さで、“警部”に成り上がった、エリート中のエリート。私たちでさえ、恐怖を覚える程の、冷静さを持った、警視庁一、賢い人材だ…。
 簡単に言えば、彼に従っていれば、事件は、自ずと、解決が近づいてくる…。
 私が、憧れた、数少ない男性の一人だ…。
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