探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#6

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 時刻は更に、数十分前のコンビニ内に戻る。
 「協力って、何ですか?」
 客の一人の、女子大生が、三嶋にそう訊ねた。
 「あんたみたいなのが、丁度良いか…。」
 三嶋はそう呟き、女子大生の手足の縄を解いた。
 「今から、SNSを使って、今から言う情報を、拡散してほしい。予めアカウントは、幾つか作ってある。それを利用して、他の連中にも、そのコメントを、フォローし、拡散の手伝いをしてほしい。
 これは強制ではない…。嫌なら、何もしないで、見て居て欲しい…。どっちにしろ、俺は、人質を取り、コンビニに立て籠もった、凶悪犯だ。俺に伸し掛かる、罪は変わらない。少しでも楽になりたいのなら、今ここで、出て行くことを、勧める。」
 三嶋は更に、人質である、客や店員、店長たちの縄を解き、そう言った。
 個人的には、皆でこのタイミングで、店を出て行って欲しいのだが…。
 「私、やります。それで、貴方の目的が達成されるのであれば。」
 三嶋の、訴えに、感化されたのであろう、女子大生がそう、堪え、レジカウンターからスマホを一台、取り上げた。
 「良い判断だ…。」
 ここは駅前とはいえ、普通に人が住んでいる、マンションが、建ち並んでいる。その為、報道陣のカメラが居なくなっても、このコンビニの、出入り口の辺りは、近隣の人達に、見られている可能性がある。ネットに、依存しつつある、この現在、良からぬ憶測や、変な噂が、立つことも、目に見えている…。
 犯人からだけではなく、世間からも、身を守るという、意味では、ここに、残った方が賢明だ…。
 「俺も、力になる。正直、あの、副総理には、昔から余り、良いイメージはしなかったからな…。」
 店長も、そう言い、スマホを一台、手に取った。
 

 「どうして、私なんですか!」
 私は、そう叫んだ。一課の人間になったとはいえ、まだ日が浅い。ましてや、現場に出て、凶悪事件を、担当するなんて、初めてだ。経験もなければ、対応の仕方も、分からない。
 少しでも、間違えたら、人質の命も危ない可能性もある。
 「他にも、適任がいるでしょ!他の男性警官とか!」
 「他の男どもだと、一層警戒される可能性があるからな…。経験も浅い、工藤が行けば、警戒が浅くなると、思ってな。」
 「それよりなにより、この仕事は経験ですよ。私たちも、何も、算段なしに、工藤さんを、前線に送りこむことはしませんよ。」
 「ですけど…。」
 そう言いかけた時、情報収集をしていた、刑事がこちらに、寄ってきた。
 「梅木警部!これ見て下さい!」
 そう言って、スマホの画面を見せてきた。
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