探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#3

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 「ハ、ハッキング⁈」
 私と梅木警部と、何人かの刑事が、ほとんど同じ、タイミングで、声を上げた。
 「相沢さん!それ、違法ですよ!」
 「あぁ、そこで大人しくしてろ、今すぐしょっ引いてやる!」
 梅木警部が、鼻息荒く、そう叫び、近くにいた刑事たちに、指示を出し始めた。
 「その必要はないよ、梅木君。」
 小気味良い、革靴の音響かせ、私たちの下に近づいてきたのは…。
 「ま、前園さん…。」
 「その必要はない、とはどういう事ですかい?前園…。」
 梅木警部がさらに、怪訝そうな表情で、彼を睨んだ…。そんな、怖い表情の中、彼は、流暢に答えた。
 「私が、許可を出しましたから…。」
 「何だと!」
 さらに、梅木警部が吠えた。
 「そんなに吠えて、何か変わりますか?これだから、君みたいな、熱血君は、苦手なんだ…。」
 耳を塞ぎながら、言った。それを聞いた、梅木警部が、たじろいだ…。
 「私たちの、任務は、事件解決の前に、人質の確保。君たちが、モタモタして居る間に、犯人の計画が、着々と進んでいたら、どうしますか?」
 「計画?」
 私が、聞き返した。確か、先ほど、京子さんが、似たようなことを言っていた。だが、その時は、彼女の憶測であり、それだけ、深くは考えなかった。
 だが、今回彼は、はっきりと、“計画”と発言した。

 「工藤君、君ももう少し、頭を使いたまえ…。いつまでたっても、天木涼子頼みじゃぁ、刑事としての、誇りが廃れるぞ…。」
 痛いところを、突かれた。勉強は、できない方ではないが、できる程でもない…。確かに、最近は、天木さんや、京子さんを見習い、自分なりに、考えて、行動や発言を、行うようにしていたが、まだまだらしい…。
 「面目ないです…。」
 「まぁ、良いよ。それより、これだけ、優秀な“刑事”が集まって、“計画”の“け”の字も出てこなかった、となると、尚更拙いからね…。」
 前園警部が、呆れたように、更に話を続けた。
 「先ず可笑しな点が、幾つか或る。それはどこだと思う?梅木君?」
 問題形式なのか…。
 「犯人からの要望が、一切ないところだな…。」梅木警部が、嫌々ながら答えた。
 「そう。この時点で、まず、他の立て籠もり事件には無い、特異性が、ある。ここで、絞られる、武装した犯人の計画とは、なんだと思う?工藤君?」
 「えっと…無制限の時間稼ぎ…ですか?」
 「ご名答。時間くらいなら、身代金や、車両要求などでも、簡単に可能だが、それだと、いずれ、終わりが来る。その点、無言のままだと、相手の要望どころか、素性を調べるまで、こんなに時間がかかってしまう。」
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