探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅩ:潜入捜査

#9

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 「5人?この、事務所には、4人しか、居なかったはずじゃ…。」
 男が驚いた様に、そう、聞き返した。
 「確かに、事務所に出入りしている人間は、今のところ、4人しかいない…。だが、もう一人、我々にも協力者がいる…。」
 篠崎が、そう言った時、上の階から、もう一つ、男の声が聞こえて来た。
 「そりゃ、気が付かないよな…。何せ、一度も事務所に、顔を出した事、ねぇんだからよ。」
 コツコツと、革靴の足音と共に、もう一人の男の声は、大きくなってきた。
 それと同時に、香ばしい、煙草の香りもつ億なる…。私自身、煙草の匂いは、あまり好きではない。だから、この男と接触するときは、思わず、鼻を覆う…。
 「このビルは、禁煙のはずよ…。」
 「いいじゃねぇか、天木。それより、巧くここに誘い込めた様で、安心したよ…。」
 「でも、龍哉君、寝てるんだもん…。助けに来ないんじゃないかって、ひやひやしたよ…。」
 彼の事を、完全に信用していないわけではない。だが、流石に、鼾かかれ、すやすやと、眠られていては、起こすのも、忍びない…。
 「昨日遅くまで、課題やっていて、あまり眠れて居なかっただよ…。許してくれ…。」
 「まぁ、別に、怒っているわけではないけど…。」
 「何だ?天木、顔が赤いぞ?」
 「…っ。」
 どうやら、あいつは、察しが良いようだ…。だが、私にも、羞恥心と言うものがある。
 「く、首を抑えられたから、苦しかっただけよ!それより、あんたも、見張ってたなら、助けに来てよ、藤吉さん!」
 男はこれだから、苦手だ。彼は、男を“最初”から、今の今まで、追跡けていたのだ。だから、私が男から、首を絞められていたと、知って居ながら、私を助けに来なかったのだから…。
 「しょうがないでしょ?天木さん。そうすれば、確実な証拠が、得られませんから。」
 藤吉の後ろから、これまた、煙草の煙らせた、宮間も登場した。片手に、ノートタイプのパソコンを抱えて…。
 「あんたも、敵の本丸に、堂々と、侵入するとは、大した度胸だな。」
 篠崎の、その言葉に、男は、ハッとしたような顔をした。そう。ここは、私たちの、行動、仕事の拠点である、事務所。私たちの、本部と言っても過言ではない。
 男は、自分の、思想が、先走り過ぎ、それを、忘れていたらしい…。
 「当然、このビル一体には、監視カメラもありますし、何より…。」
 宮間が、私のパーカーのポケットから、ボイスレコーダーを一台取り出した。
 「こんな物を、忍ばせている、調査員も居る訳です。
 これを然るべき、場所に持っていけば、確実に、刑事事件に、発展しますね。」
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