探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅩ:潜入捜査

#8

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 「探偵、尾行けるのも、大した物だが、それに気が付かない、俺たちでも、無いんだよ。」
 篠崎が、男に向かって、そう言った。男なんて、皆同じ…。そう思っていた私の、固定概念が、覆された瞬間でもあった。
 「い、何時からだ…。俺が、お前らを、尾行けてたって、気付いたのは…。」
 男が、よろよろと、立ち上がりながら、彼に訊ねた。
 「最初から…。」
 篠崎が、言葉を発する前に、私が答えた。
 「貴方が、ウチに依頼に来た時から、可笑しいと、思っていたの。本来、“探偵”に浮気調査を依頼するときっていうのは、対象の、行動が、怪しいと思った段階で、ダメもとで依頼するのが、基本。」
 浮気調査は、探偵じゃなくても、興信所にも、依頼することは可能。両社に、大きな違いは無い。違うところが、あるとすれば、料金だ。興信所の場合、一律して、料金が決まっていたりするが、探偵は、そうでもない。テレビのコマーシャルや、雑誌などに掲載される様な、大手の探偵。特定の分野において、専門的に、依頼を請け負っている様な、探偵事務所などは、調査員の質や量も、厚みがあり、その分、費用が、多少割高であったり、料金体系も違ったりする。
 逆に、当時のホームズの様な、無名で、人員も少ない、事務所に依頼するときは、それなりの、確証があってから、調査の依頼に来るケースが、多い。なぜなら、評判も、調査員の質も、不明だから。決して安くない、調査費用を出して、“空振りでした。”なんて、玉砕にも、程がある…。
 「だから、貴方が、最初に依頼しに来た時の台詞、“妻の様子が、最近変でして…。携帯も、肌身離さず、持っていますし…。”って言葉に、違和感を覚えました。
 だって、携帯を肌身離さず持っているなんて、そんなに変な事ではない。家の中でも、携帯を、常に身に着けている人だって、居る訳だし…。何より、着信が、あるかどうかも、不明のまま。
 そう言った、“前提”を持ったまま、話を続ければ、確かに、不倫か、浮気に関しての、“怪しさ”は浮かんでくるけど、ただ、それだけの、情報では、何とも、評価でない。
 だから、最初から、可笑しいと、思っていました。」
 私は、彼が、依頼に来た時と、同じ推理を、彼に、言って聞かせた。
 男は、ポカンとした表情のまま、私の言葉を聞いていた。
 「そう言う事。だから、俺達は、初端から、アンタを、信用してなかった訳。
 流石に、5では、苦労したよ。同時進行で、アンタを、調査するのも…。」
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