152 / 281
ファイルⅩ:潜入捜査
#3
しおりを挟む
「だって、皆いまいち緊張感がないから…。
私が、現場まで出向いて、喝を入れてやらなきゃと思って…。」
決して“楽しそうだから”と、思ったわけではない…。芥子の事だ。そんな言い訳、直ぐ見破れる。だが、今はイヤホンとマイク越し…。彼女に、今の私の感情を読み取る事は、できない。
「それは、そうかもしれないけど、そこまでしたら、司令塔の意味がないでしょ?」
案の定、疑われることなく、話を進められた。
「それに、天木ちゃんが、そこまでしなくとも、大丈夫。カツキ君が、来てくれたから。」
芥子がそう言った直後、地を這う様な、男の低い声が、イヤホンから響いた。
「おい。」
そのたった一言で、現場に居るメンバー含め、その場に居た人物、全員に、悪寒が走知った。空気が張り詰めるという言葉は、こういう事を、示すのだろう。
「人命が、かかっているんだぞ、節度を保てよ、お前ら。
天木も、もっとしっかりしろ、現状お前が、一番トップってこと、自覚しろ。」
怒鳴り声よりも、迫力がある、よく通る、低い声で、説教を受けると、嫌でも空気が変わる。
これが、“裏”ラストホームズの、リーダー格、植月桂樹。所属は、クサカベ班、特殊作戦実行員。頭脳は、私と土屋を足して、2で割った様な、レベル。頭がいいというよりは、ずる賢い。悪知恵が働くと言った方が、いいかもしれない。
物理的な喧嘩で言えば、日下部や亮太、秋山の方が断然強いが、タフさで言えば、植月の方が上。
彼は、篠崎を除き、ホームズ三人目の古株。
そして、元探偵の実績すら持ち合わせている。私も、昔から、何度も彼と仕事を、こなしてきた。
だが、彼の出生から、経歴まで、知らない事が多すぎる。知って居る事と言えば、前述の、“元探偵”と言う事と、“現金しか、信用しない”と言う事…。
今から7年と3か月前。当時18歳になったばかりの私は、社会人の右も左も分からなかった。ただ、バイトの様な仕事をこなすような日々は続いた。
そんな中、初めて、事務所の外に出て、仕事をする機会ができた。その時に、一緒に行動してくれたのは、植月だった。
初めての、仕事は、探偵では、定番の「浮気調査」。新婚である夫婦の、嫁さんの行動が、少しおかしい事に、気が付いた、旦那さんからの、依頼だった。
結局、それは、旦那さんの早とちりで、お嫁さんの方には、浮気はおろか、兄弟以外の、男性の影すらなかった。
その仕事の終わりに、植月に、つけ麺を一杯ごちそうになった。
「天木、お前、好きな人とか居るのか?」
私が、現場まで出向いて、喝を入れてやらなきゃと思って…。」
決して“楽しそうだから”と、思ったわけではない…。芥子の事だ。そんな言い訳、直ぐ見破れる。だが、今はイヤホンとマイク越し…。彼女に、今の私の感情を読み取る事は、できない。
「それは、そうかもしれないけど、そこまでしたら、司令塔の意味がないでしょ?」
案の定、疑われることなく、話を進められた。
「それに、天木ちゃんが、そこまでしなくとも、大丈夫。カツキ君が、来てくれたから。」
芥子がそう言った直後、地を這う様な、男の低い声が、イヤホンから響いた。
「おい。」
そのたった一言で、現場に居るメンバー含め、その場に居た人物、全員に、悪寒が走知った。空気が張り詰めるという言葉は、こういう事を、示すのだろう。
「人命が、かかっているんだぞ、節度を保てよ、お前ら。
天木も、もっとしっかりしろ、現状お前が、一番トップってこと、自覚しろ。」
怒鳴り声よりも、迫力がある、よく通る、低い声で、説教を受けると、嫌でも空気が変わる。
これが、“裏”ラストホームズの、リーダー格、植月桂樹。所属は、クサカベ班、特殊作戦実行員。頭脳は、私と土屋を足して、2で割った様な、レベル。頭がいいというよりは、ずる賢い。悪知恵が働くと言った方が、いいかもしれない。
物理的な喧嘩で言えば、日下部や亮太、秋山の方が断然強いが、タフさで言えば、植月の方が上。
彼は、篠崎を除き、ホームズ三人目の古株。
そして、元探偵の実績すら持ち合わせている。私も、昔から、何度も彼と仕事を、こなしてきた。
だが、彼の出生から、経歴まで、知らない事が多すぎる。知って居る事と言えば、前述の、“元探偵”と言う事と、“現金しか、信用しない”と言う事…。
今から7年と3か月前。当時18歳になったばかりの私は、社会人の右も左も分からなかった。ただ、バイトの様な仕事をこなすような日々は続いた。
そんな中、初めて、事務所の外に出て、仕事をする機会ができた。その時に、一緒に行動してくれたのは、植月だった。
初めての、仕事は、探偵では、定番の「浮気調査」。新婚である夫婦の、嫁さんの行動が、少しおかしい事に、気が付いた、旦那さんからの、依頼だった。
結局、それは、旦那さんの早とちりで、お嫁さんの方には、浮気はおろか、兄弟以外の、男性の影すらなかった。
その仕事の終わりに、植月に、つけ麺を一杯ごちそうになった。
「天木、お前、好きな人とか居るのか?」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。




失せ物探し・一ノ瀬至遠のカノウ性~謎解きアイテムはインスタント付喪神~
わいとえぬ
ミステリー
「君の声を聴かせて」――異能の失せ物探しが、今日も依頼人たちの謎を解く。依頼された失せ物も、本人すら意識していない隠された謎も全部、全部。
カノウコウコは焦っていた。推しの動画配信者のファングッズ購入に必要なパスワードが分からないからだ。落ち着ける場所としてお気に入りのカフェへ向かうも、そこは一ノ瀬相談事務所という場所に様変わりしていた。
カノウは、そこで失せ物探しを営む白髪の美青年・一ノ瀬至遠(いちのせ・しおん)と出会う。至遠は無機物の意識を励起し、インスタント付喪神とすることで無機物たちの声を聴く異能を持つという。カノウは半信半疑ながらも、その場でスマートフォンに至遠の異能をかけてもらいパスワードを解いてもらう。が、至遠たちは一年ほど前から付喪神たちが謎を仕掛けてくる現象に悩まされており、依頼が謎解き形式となっていた。カノウはサポートの百目鬼悠玄(どうめき・ゆうげん)すすめのもと、至遠の助手となる流れになり……?
どんでん返し、あります。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる