探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
146 / 281
ファイルⅨ:人質事件

#12

しおりを挟む
 「繋ぎは良いとして、警察の支援は?まだ事件は終わっていないでしょ?」
 大竹義信。彼との付き合いは、結構長い。かれこれ、15年。だから、彼の性格は、嫌と言う程、理解している。一度持った、意思は、曲げず、相手が、多勢だろうと、一人で突き進む、猪突猛進なところがある。だから、『研究者』と言う職種が彼にとっての天職なのだろう…。
 今の彼も、そうだ。いくら私が言ったところで、彼の思惑が、変わるはずがない。
だが、彼の力を利用しようと考えていた、京子の怒りは、計り知れない…。多分だが、次、彼が、彼女に会った時、様々な罰を受けることになるだろう…。
 「充分協力したさ…。マキマキも、俺が警察嫌いなのも、知っているだろ?あとは、ざわちんが、巧くやってくれるだろうさ…。」
知って居るどころか、裏・ラストホームズは、5人全員、警察が嫌いだ。彼や、相沢だけでなく、私も実採も、あの人も…。だからと言うわけではないが、皆、警察に『協力』することに関しては、多少渋る事がある。
 かといって、それを言い訳にして、周りから、白い眼を向けられるもの御免だ。だから、節度を持って、接するようにはしている…。
 「まぁ、あんたが良いならそれで、良いけど…。この後どうするの?私は、さっき言った通り、私は楓ちゃんの所に行く予定だけど…。」
 「俺も、そっちに行く。後々、そっちに、俺が必要になって来ると思う。だから、ざわちんが、来てくれたんだろ?」
 

 大竹さんが、去ったと知ってから、京子さんの怒りは、凄まじかった。いつその、怒りの矛先が、『無関係』の私たちにまで、向けられるのかと、ビクビクするほどだ…。
 「ほんと、信じらんない!リューさんも、気が付いてたんなら、何で止めないの!」
 「他に、何か依頼でも、あるのかと思って…。」
 大の大人が、説教されているのは、見ていて、清々しいものではない。ましてや、ホームズの“班長”ともあろうお方が、部署は違えど、部下である、“副班長”にだ…。
 社会に出れば、こういったことは、珍しくないのだろうが、思わず、耳と目を逸らしたくなるのは、事実だ…。
 「はぁ…。リューさんに怒ったって、意味ないか…。」
 しばらく愚痴をこぼした後、冷静になったのか、ため息を吐き、仕切り直した。
 「刑事さんたちは、引き続き、捜査をお願いします。何か、分かりましたら、お手数ですけど、こちらまで、連絡ください…。」
 力なくそういうと、名刺を警察の捜査班の班長それぞれに、渡して行った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レトロな事件簿

八雲 銀次郎
ミステリー
昼は『珈琲喫茶れとろ』と夜は『洋酒場レトロ』の2つの顔を持つ店で、バイトをする事になった、主人公・香織。 その店で起こる事件を、店主・古川マスターと九条さん等と、挑む。 公開予定時間:毎週火・木曜日朝9:00 本職都合のため、予定が急遽変更されたり、休載する場合もあります。 同時期連載中の『探偵注文所』と世界観を共有しています。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...