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ファイルⅨ:人質事件
#7
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「何だ、この猫…。」
レジの画面に映し出されたのは、一匹の三毛猫だった。三毛猫は画面の中央に座り込み、こちらをじっと見ている。たまに、瞬きするところを見ると、画像や、イラストではなさそうだ。
「そいつは、俺の仲間からのメッセージだ。何て書いてある。」
無様に放りだされた身体を、起こし立ち上がった。その姿には、三嶋だけでなく、周りの人質たちも驚いていた。
「お前、どうやって手錠と縄を…。」
「手錠なんざ、針金一本あれば、簡単に解錠できる。」
ひらひらと、手に持っていた黒い針金を、見せた。
「そんなもの、どこから…。」
「そこのお姉さんの頭から、一本拝借させていただきました。」
黒い針金の折り曲げ、ヘアピンの形に、戻した。それを、女子大生の髪に挿し直し、髪形を整えた。
「そ、それでも、足の縄は!きつく結んだはずだぞ!」
「あぁ、確かに普通の人になら、普通の固結びの様に見えるが、これは、“本結び”という結び方だ。」
その単語に、奴がピクついたのを、見逃さなかった。
「本結びは、強度が強く、簡単に結べる為、慣れれば、無意識の内に、その結び方をする人が、居たりする。
更に、見慣れない人なら、解くのに時間がかかるから、今回の様に、一般人を拘束することが、目的なら、一番有効的だな。
だが、残念ながら、俺は、その解き方も、結び方も知っていたがな。」
三嶋が、更に動揺し始めた。ここまで、説明させられれば、後は、追い詰めるのは簡単だ。
「この結び方を、知っていて、尚且つ日常的に使うとなると、人物は、限られてくる…。
俺の予想では、あんたの前職は、自衛隊ではないかい?」
図星だった様で、三嶋は更に狼狽え始めた。
「何故分かった…。」
確かに、結び方を習う、職業ってのは、いろいろある。船に乗る事の多い、漁師や航海士。災害や非常事態に備えて、ロープワークを学ぶ、消防士や自衛隊。
趣味でも、サバイバルの上級者なら、知っている人も多いだろう。
「あんた、さっき俺に銃向けた時、背面にある、暴発防止装置を無意識に握っていたろ。
サバイバルゲームとか、モデルガンマニアとかならまだしも、普通の一般人なら、その装置の存在すら知らない人も、多い。
そんな中、あんたは、咄嗟的に人に銃を突き付けて居ながら、暴発防止装置は、手放さなかった。
つまり、銃の扱い方を知っている。もしくは、それなりの知識と経験がある奴かと思ってな…。」
三嶋は、力が抜けた様に、背負っていた銃二丁をカウンターの上に、放り投げた。
レジの画面に映し出されたのは、一匹の三毛猫だった。三毛猫は画面の中央に座り込み、こちらをじっと見ている。たまに、瞬きするところを見ると、画像や、イラストではなさそうだ。
「そいつは、俺の仲間からのメッセージだ。何て書いてある。」
無様に放りだされた身体を、起こし立ち上がった。その姿には、三嶋だけでなく、周りの人質たちも驚いていた。
「お前、どうやって手錠と縄を…。」
「手錠なんざ、針金一本あれば、簡単に解錠できる。」
ひらひらと、手に持っていた黒い針金を、見せた。
「そんなもの、どこから…。」
「そこのお姉さんの頭から、一本拝借させていただきました。」
黒い針金の折り曲げ、ヘアピンの形に、戻した。それを、女子大生の髪に挿し直し、髪形を整えた。
「そ、それでも、足の縄は!きつく結んだはずだぞ!」
「あぁ、確かに普通の人になら、普通の固結びの様に見えるが、これは、“本結び”という結び方だ。」
その単語に、奴がピクついたのを、見逃さなかった。
「本結びは、強度が強く、簡単に結べる為、慣れれば、無意識の内に、その結び方をする人が、居たりする。
更に、見慣れない人なら、解くのに時間がかかるから、今回の様に、一般人を拘束することが、目的なら、一番有効的だな。
だが、残念ながら、俺は、その解き方も、結び方も知っていたがな。」
三嶋が、更に動揺し始めた。ここまで、説明させられれば、後は、追い詰めるのは簡単だ。
「この結び方を、知っていて、尚且つ日常的に使うとなると、人物は、限られてくる…。
俺の予想では、あんたの前職は、自衛隊ではないかい?」
図星だった様で、三嶋は更に狼狽え始めた。
「何故分かった…。」
確かに、結び方を習う、職業ってのは、いろいろある。船に乗る事の多い、漁師や航海士。災害や非常事態に備えて、ロープワークを学ぶ、消防士や自衛隊。
趣味でも、サバイバルの上級者なら、知っている人も多いだろう。
「あんた、さっき俺に銃向けた時、背面にある、暴発防止装置を無意識に握っていたろ。
サバイバルゲームとか、モデルガンマニアとかならまだしも、普通の一般人なら、その装置の存在すら知らない人も、多い。
そんな中、あんたは、咄嗟的に人に銃を突き付けて居ながら、暴発防止装置は、手放さなかった。
つまり、銃の扱い方を知っている。もしくは、それなりの知識と経験がある奴かと思ってな…。」
三嶋は、力が抜けた様に、背負っていた銃二丁をカウンターの上に、放り投げた。
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