139 / 281
ファイルⅨ:人質事件
#5
しおりを挟む
「これで、どうやって、指紋を採取するんですか?」
大竹さんに、そう訊ねたが、自分でも、何となく答えが出た。
「スマホに標準搭載されてる、指紋認証ですよ。」
私は、今このスマホの画面を見るために、無意識に、スマホのボタンを触った。その隙に、指紋を採取することは、容易だ…。
「なるほど…。」
だが…。
「最近のスマホには、指紋認証が、搭載されていますからね…。後は、うまい具合に、スマホを触らせさえすれば、簡単です。」
そう、その、『うまい具合に』というのが、最大な難関だ。
今、大竹さんに、渡されたスマホは、私がプライベートで使っている物と、同型の機種だった為、何の躊躇いもなく、ボタンの位置を、触る事が出来た。
今日たまたま遭遇した、人物の特徴や癖を、何となく理解しただけでは、自分のスマホを『うまい具合に』触らせることは流石に、難しい。
それを一発で、しかも、人質という、最悪の状況下で、そんな余裕あるのだろうか…。
「安心してください。あの中に居るのは、他でもない、土屋慎介です。伊達に我々20人のトップに居る訳ではありませんよ。」
大竹さんが、そう呟いた。
それでも、私は、少し気がかりだ…。私は、彼の事をよく知らない…。たとえ、彼の知り合いや部下が、信頼を置いていようが、私取っては、彼もまた、ただの一般市民に過ぎない…。
「土屋さんの実力を、無下にしている訳では無いですが、万が一、何かあれば…。」
「その万分の一を避けられるのが、土屋慎介という男です。
あの人は、私たちが想像する、更にその先を見据える事ができます。
私たちは、彼の答えを待つだけです。」
「とにかく、この男の素性を、全て洗い出せ!」
梅木警部が、捜査員に指示を出した。
調書は、数年前の物で、情報が、古い…。
だから、この調書を頼りに、新しい情報を、追加する必要がある。
そうなると、一つずつ、地道に調べ上げる必要がある…。
どこから当たるか…。
「そこは、俺に任せてもらって良いか?」
日下部さんの声が、響いた。
「任せるって、心辺りあるのか?」
「正確に言えば、俺“たち”か…。」
そう言うと、彼は、スマホを取り出し、誰かに、電話をかけ始めた。
「おはようございます。朝から申し訳ないですが、アキさんに、調べてもらいたいことがあります。」
電話の相手は、どうやら、秋山さんらしい…。
大竹さんに、そう訊ねたが、自分でも、何となく答えが出た。
「スマホに標準搭載されてる、指紋認証ですよ。」
私は、今このスマホの画面を見るために、無意識に、スマホのボタンを触った。その隙に、指紋を採取することは、容易だ…。
「なるほど…。」
だが…。
「最近のスマホには、指紋認証が、搭載されていますからね…。後は、うまい具合に、スマホを触らせさえすれば、簡単です。」
そう、その、『うまい具合に』というのが、最大な難関だ。
今、大竹さんに、渡されたスマホは、私がプライベートで使っている物と、同型の機種だった為、何の躊躇いもなく、ボタンの位置を、触る事が出来た。
今日たまたま遭遇した、人物の特徴や癖を、何となく理解しただけでは、自分のスマホを『うまい具合に』触らせることは流石に、難しい。
それを一発で、しかも、人質という、最悪の状況下で、そんな余裕あるのだろうか…。
「安心してください。あの中に居るのは、他でもない、土屋慎介です。伊達に我々20人のトップに居る訳ではありませんよ。」
大竹さんが、そう呟いた。
それでも、私は、少し気がかりだ…。私は、彼の事をよく知らない…。たとえ、彼の知り合いや部下が、信頼を置いていようが、私取っては、彼もまた、ただの一般市民に過ぎない…。
「土屋さんの実力を、無下にしている訳では無いですが、万が一、何かあれば…。」
「その万分の一を避けられるのが、土屋慎介という男です。
あの人は、私たちが想像する、更にその先を見据える事ができます。
私たちは、彼の答えを待つだけです。」
「とにかく、この男の素性を、全て洗い出せ!」
梅木警部が、捜査員に指示を出した。
調書は、数年前の物で、情報が、古い…。
だから、この調書を頼りに、新しい情報を、追加する必要がある。
そうなると、一つずつ、地道に調べ上げる必要がある…。
どこから当たるか…。
「そこは、俺に任せてもらって良いか?」
日下部さんの声が、響いた。
「任せるって、心辺りあるのか?」
「正確に言えば、俺“たち”か…。」
そう言うと、彼は、スマホを取り出し、誰かに、電話をかけ始めた。
「おはようございます。朝から申し訳ないですが、アキさんに、調べてもらいたいことがあります。」
電話の相手は、どうやら、秋山さんらしい…。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
10日間の<死に戻り>
矢作九月
ミステリー
火事で死んだ中年男・田中が地獄で出逢ったのは、死神見習いの少女だった―…田中と少女は、それぞれの思惑を胸に、火事の10日前への〈死に戻り〉に挑む。人生に絶望し、未練を持たない男が、また「生きよう」と思えるまでの、10日間の物語。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる