探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅧ:二つの事件

#10

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 『と、言うわけだから、ツッチーもリューも早く終わらせて、こっちに合流して。』
 日下部さんのスマホ越しに、天木さんがそう言った。
 そんな大事な案件、警察内部の一部の人間しか知らない…。
 現に、私も含め、ここにいる刑事たちは、そんな事知らなかった。
 「そ、そんな大事な事、私も聞いて良いんですか?」
 日下部さん等が乗ってきた、六輪車の裏で、声を含め、電話越しの天木さんに訊ねた。
 警察内部のごく一部しか知らない情報を、一刑事の私に教えてしまっていいのか…。
 『いいんじゃない?クドーだって、警察でしょ?』
 「それはそうかもしれませんが、警察内部にだって、“極秘”っていう物が存在するんですよ…。」
 私は、スマホを持ってくれている日下部さんに目配せし、同意を求めた。
 しかし、日下部さんは、首を傾げるだけで、意味を理解していなさそうだった。
 すると、電話の向こうから、何かを叩く音が、4度聞こえた。
 『ツッチー…。分かったよ…。』 

 天木さんが、それに答えるように、返事した。
 話の内容からして、土屋さんからの返答だという事は、分かったが、一体どうやって…。
 「スマホも、スマートウォッチも取り上げられてるのに、どうやって…。」
 土屋さんは、人質に取られている為、通信機器等は、全て取り上げられ、外部との通信は、出来ない筈…。
 「俺たちが、スマホとウォッチしか、通信機器を持っていないと思ったら、大間違い。」
 そう言うと、彼は胸ポケットから、眼鏡を一つ取り出した。
 普通の眼鏡より、つるの部分が、四角く、太い…。
 「それって、もしかして…。」
 「スマートグラスってやつです。市販はされていますが、未だ高価ですから、私が作りました。」
 大竹さんが、自慢げにそう述べた。
 スマートグラス…。テレビや雑誌などで、度々見たり、聞いたことがあるため、私だって知っている…。
 眼鏡のレンズの部分が、液晶またはスクリーンになっており、そこに映像を映しこませる…。
 物によっては、カメラが付いて居たり、電話機能があったりする…。
 それを、自作したとなると、とんでもない技術と知識だ…。
 「土屋さんが持っているのは、通話機能と撮影はもちろん、骨伝導でイヤホンなしでも音声が聞こえる。
 更には、これ…。」
 そう言って、取り出したのは、ネクタイピンと、ボールペンだった。
 「これらは、所謂スパイグッズと言われるもので、小さいカメラとマイクが付いている。
 どうやら、土屋さんは、捕まる直前に、店内の至る所に、これらをばら撒いたみたいだね。」
 そう言って、大竹さんは、タブレットPCを操作し始めた。
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