探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅧ:二つの事件

#8

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 私のその発言で、今まで騒がしかった会議室が、静まり返った。
「それは、どういう意味だ?」
 芦原の隣にいた、中年の男性が聞き返した。
 「そのままの意味ですよ。」
 私は、近くにあったパソコンの、ブラウザを開き、あるファーストフード店の画像を調べた。
 「この店の、包装紙の英文が、この怪文書の一部に使われています。
 フォントが、独特なので、鑑定しなくても分かります。」
 その店のホームページを開き、柏木に頼み、スクリーンに映させた。
 そこには、メインメニューである、ハンバーガーの写真が載っている。
 「この、薄っすらと写っているのが、この店の包装紙です。」
 マウスカーソルで、その部分をなぞり、写り込んだ包装紙を示した。
 全国チェーン店の為、ここにいる、殆どの人が、納得したような声を漏らした。
 「なるほど、それは分かったが、何故、されが、『一か月前』だというのが、分かった?」
 「この包装紙、微妙ですが、一か月前に、新しくなってるんです。
 そして、この怪文書にある、『Messenger(使者)』は、この新しくなった包装紙にしか、書かれていないんですよ。」
 「…。」
 会議室内は、更に静まり返った。
 実際、包装紙が新しくなったことなど、公表されていない為、相当なマニアくらいしか、気が付かないだろう…。
 「そう言う事か…。」
 芦原は、納得した様に、背もたれに凭れ掛かった。
 「実は、この手紙が我々の下に送られてきたのは、丁度一週間前。
 最初は、冗談か悪戯かと思ったが、国際テロ組織も、何やら動き出してきているらしくてな…。」
 「それで、笑ってもいられなくなったと?」
 宮間が、煽る様な口調で、言い加えた。
 「それで?」
 柏木が近場の机に腰かけ、芦原に訊ねた。
 「何で、今日、あたしたちがここに呼ばれたの?」
 それも、私の中で、答えが出ていた。
 「今日は、警察上層部の偉い方々と、政界のトップ含め、総勢100名での、交流会があるんでしょ?」
 芦原含め、周りの人達も、目を見開き、私の方に注目しだした。
 「何故それを…。」
 どうやら、余り世間には知られていない、情報らしい。
 だが…。
 「下の事務室?のホワイトボードに、何やら予定が書かれていたからね。」
 当然、身内しか分からない様な、言葉で書かれていたみたいだけど、生憎、暗号の解読が得意な人が、ウチには居る…。
 「見られて困る様なら、付箋なりポスターで隠すなり、すればよかったですね?」
 芦原が、深いため息を吐き、重い口を開いた。
 「君たちを呼んだのは、他でもない、警察の『役』をやって貰いたい。」
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